〈詳報記事〉村田製作所が横浜の体験型施設リニューアル、車載技術を熱烈アピール、xEVや自動運転で商機拡大、車の開発初期から参画

村田製作所はこのほど、車載事業の体験型施設をリニューアルした。同施設「MURATA みらい MOBILITY」は注力市場向け製品の研究開発やマーケティング機能を担う「みなとみらいイノベーションセンター」(横浜市西区)内にあり、顧客との商談や新技術の共創の場として活用する方針だ。
同施設は2021年にオープン。当初の目的は「車載市場での村田の取り組みを知ってもらうこと」(同社幹部)。そのため、同社が世界シェア4割を握る積層セラミックコンデンサー(MLCC)やセンサーなど車載向け基板の展示をメインにしてきた。一方、今回の刷新では新しい技術を顧客と議論・共創するための施設へと大きく様変わりしている。
その背景には、モビリティーと電子機器の顧客では、求められるコミュニケーションの質が違うという悩みがあったという。”電子部品の王者”とも呼ばれる名門が抱える危機感とは何か。
あえて未完の素材技術ずらり、共創相手を募集
130平方メートルほどの空間に記者が足を踏み入れると、目を引くのは「音」「熱」「振」といった感覚用語を記載したカラフルなプレート。表面と超音波センサーの間に挟むだけで超音波が透過できるようにする人工材料など、5〜10年ほど先に実用化を目指す素材のサンプルがずらりと並ぶ。リニューアルにあたって担当者が「一番工夫した」と胸を張るコーナーだ。

なぜ実績のあるMLCCなどではなく、あえて未完成の技術をアピールするのか。その狙いは、見学者のインスピレーションを刺激し、「共創」のきっかけを作ることだ。展示のすぐそばには、20人ほどが座れる可動型のソファとミニテーブルが並び、その場で技術的な意見交換ができる。
中長期的にEV(電気自動車)や自動運転の普及が見込まれる中、部品メーカーへの要望は高度・多様化している。村田は単に電子部品を提供するだけでなく、顧客の課題を主体的に解決しようと、開発の初期段階から顧客との「すり合わせ」を重視しているのだ。
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