人間の頭脳を超えたAI登場で何が起こるか…歴史学者ハラリがAIの進化に警鐘を鳴らす理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ユヴァル・ノア・ハラリ
「銃を手にしたロボットたちが市街を暴れ回るといった、ハリウッド映画の場面は忘れたほうがいい。現実には、AIはそれよりもはるかに危険だ」
歴史家で著述家のユヴァル・ノア・ハラリが、『NEXUS 情報の人類史』(柴田裕之訳)でそう警告する。以下は同書から抜粋・再構成したものだ。
前回記事:歴史学者ハラリが警告「ロボットの人類襲撃」より恐ろしいAIの本当の脅威

AIは「エイリアン」になってきている

従来、AIという言葉は「Artificial Intelligence(人工知能)」の頭字語として使われていた。だが、「Alien Intelligence(人間のものとは異質の知能)」の頭字語と考えるほうがいいかもしれない。AIは進化するにつれ、(人間の設計に依存しているという意味で)「人工」である程度が下がり、より「エイリアン(人間とはまったく異質のもの)」になってきているからだ。

多くの人が「人間のレベルの知能」という尺度を使ってAIを計測したり定義さえしたりしようとするし、AIがいつ「人間のレベルの知能」に到達することが見込めるかについて活発な議論も行なわれている。ところが、この尺度は大きな誤解を招きかねない。「鳥のレベルの飛行」という尺度で飛行機を定義したり評価したりするようなものだからだ。AIは、人間のレベルの知能に向かって進歩しているわけではない。人間のものとは異質の種類の知能に向かって進化しているのだ。

AI革命がまだ初期段階にある現時点でも、コンピューターは私たちについてすでに決定を下している。住宅ローンを組むことを認めるかどうか、仕事に雇うかどうか、刑務所に送るかどうかといった決定だ。一方、GPT-4のような生成AIは、新しい詩や物語や画像をすでに創り出している。この傾向は強まり、加速する一方だろう。そのため、私たちは自分の生活を理解するのがいっそう難しくなる。私たちはコンピューターアルゴリズムを信頼し、賢い決定を下してより良い世界を生み出してもらえると思って、安心していいのだろうか? それは、魔法をかけた箒が水を運んでくれることを当てにするよりもはるかに危険な賭けだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事