そういった問題意識に加え、豊田さんは、島の人口減少が進む中、将来の島の担い手育成をしていく必要があることも考えるようになった。子どもたちが自分の興味がある分野に関する地域の課題を考えることで、島の未来について考える機会を作る。地域の担い手を育成するという文脈でプログラムをつくることが必要で、学力以外の部分も向上させることが重要と話す。
なぜプロジェクト学習に力を入れるのか?
そうした考えから、夢ゼミ開発のために声をかけたのが東京でプロジェクト学習(Project Based Learning)の教材・教育手法の開発、PBLを通じて推薦・AO入試対策を教えている藤岡慎二さん。これは、推薦・AO入試に合格させることが目的ではなく、大学でいうゼミ形式の授業を作って、PBLの手法を通じて興味があること、将来の夢を発表してもらい、その場に大人や地域のスタッフが加わることで深掘りしていくのが狙いだ。
豊田さんは、育てたい人材は「グローカル人材」、つまりグローバルとローカル文脈の両方がわかるハイブリットだと話す。
「高校1年生では物事の考え方にグローカルという切り口のOSを入れます。グローバル化が進むと異質な文化との遭遇が多くなるので、その繋ぎになれる人を育てたいと考えています。そこで行われることは、ディベートというよりも、対話や落としどころを見つけて行く議論。グループワークと、社会に出て重要になる学びのブリッジを徹底的に行います」(豊田さん)
生徒たちはとても楽しそうだという。それは、日々体感していることから学びに紐づけられていて、腹落ち感があるからだろう。
2年生になると、「地域に浸す」活動になる。例えば、農業ならこの人、観光ならこの人という具合に大人たちに現場の課題について話をしてもらい、それらの課題を生徒が自分事として考えてもらう活動が始まる。
確かに、世界の遥か彼方で飢餓が発生していると言われてもそれに意識を及ばせることは物理的に遠く難しいが、自身が住んでいる町で「後継者がいなくて困っている」ということであれば、当事者として、自分事として考えやすい。
「地域という視点から考え始めると、では日本全体ではどうなっているんだろう、世界では?と具体的に考えやすくなり、より高次の社会的課題についても関わっていきたいという気持ちが出てくると考えています」と豊田さんは話す。
高校の総合学習の中では、「夢探究」という単元がある。今春から豊田さんは高校の中に席を作ってもらい、1年生と2年生の夢探究の内容を作成したり、ファシリテーションを行っている。
「将来的には、高校での知見と夢ゼミで得た知見を上手く融合することを考えています。学校でも塾でも、頭で考えて自分の言葉で話せる、ディスカッションの場を徹底的に作ることが大事だと思っています」(豊田さん)。
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