廃校寸前の人気低迷から、中学受験者数が都内で最大になるまで劇的に躍進した学校がある。東京都港区にある広尾学園だ。
開学以来、女子校として運営していたが、少子化の影響もあって生徒数が激減。そこで2007年に共学化、学校名も順心女子学園から広尾学園に変更。それまで約500人までに減少していた生徒数は、今や1600人にも増加している。
人気の理由のひとつは、個性的なIT・理系教育が行われていることだ。ロボットプログラミング講座や、DNAサイエンス講座など、ほかにはあまりない理系科目が魅力。また、多くの科目でIT端末が日常的に活用されていることも注目されている。
広尾学園の授業改革の狙いは何か。また、その成果はどうなっているのか。同校でIT・理系教育の旗振り役的存在である、生物担当の榎本裕介教諭に話を伺った。
博士号を持つ理系教師が率いる
――工学で博士号をお持ちと聞きました。中学校、高校の先生としては珍しいと感じます。
確かに、そうかもしれないですね。数学理科が好きで理系に進み、博士号を取得しました。専門は、遺伝子工学、植物分子生物学、植物栄養学です。しかし、東京大学でポストドクター(博士研究員)をしていたときに、日本の理系リテラシーの低さを痛感し、いくら研究しても世の中にそれが普及するのは難しいと思ったのです。それで教育の道に進みました。
当初は、情報の授業にチームティーチング(TT)として入りましたが、その後、必要な情報をネットから持って来て吟味するという力を生徒につけさせるために、学術論文を作成したことがある人が必要と言われ、現在までそれに携わっています。
――広尾学園ではIT端末をどう活用していますか。
最初にiPadを導入したのは2011年4月で、高校1年生の医進・サイエンスコース40人だけでした。初めは主な目的である学術論文を読んだり、それに付随する情報の検索に使う程度かと思っていたのです。
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