ここ数年、タブレットを用いた授業や、子ども向けのプログラミング教室が盛況との話をよく耳にするようになった。ITと教育の融合は、今後、どのような展開を見せるのか。この連載では、有識者や現場で実際にIT教育を実践している人たちに話を聞くことで、新しい教育の形について考えていく。
第1回目は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)。1990年に設立された同校は、学術に最先端のものを取り入れようという進取の精神に富んだ学校と言われ、全国から優秀な学生が集まってくる。その大学が考えるIT教育とは何か。日本における「インターネットの父」とも呼ばれる慶應義塾大学環境情報学部長・村井純教授に聞いた。
偏差値への影響があってもかまわない
――慶應がIT入試を始めると話題です。
2016年から「情報」を選択科目として入試に入れます。すでに2012年12月にアナウンスしていますが、それは高校生に対するメッセージだったのです。「もしSFCに来たい子がいたら、これから情報の科目を取っておくといいことがあるかもしれないよ」という。
――いったいその狙いは何ですか?
もともと慶應では、情報教育を1990年の設立当初から行っていました。当時、ラップトップPCを全員が使う情報教育を行っていたのは日本では慶應SFCしかなく、米国でも1校もなかったのです。ただ、ある年、高校の教科として情報を入れるという革命的なことが起きました。それで、慶應としては、「コンピュータができる子が、これから大学に入ってくるんだ!」と思ったのです。しかしふたを開けてみると、これが全然できやしない(笑)。
さらに2012年の高校1年生から、教科数学の中からプログラミングが外れてしまいました。その子どもたちが大学に入ってくるのが2016年。入試の科目にもなっていないから、ますます情報教育を高校でやらなくなっています。そうしたことから、次のカリキュラム改訂でやはり大学で教えないとダメだと悟り、SFCでは全員がビッグデータ解析をできるようなカリキュラムにしたのです。
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