あえて"非一流"の京大を選び、勝ち続ける男 練習環境も、食事も、ないない尽くしの中で

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一流の環境に身を置かなくても、勝ち続けることはできるか?(中央が京都大学の平井健太郎。写真:アフロスポーツ)

受験勉強とスポーツの共通点は? この問いに素早く答えることができるだろうか。ほとんどの人が、う~んと考えてしまうことだろう。しかし、京大生ランナー・平井健太郎はよどみなく答えてくれた。

「勉強も陸上もだいたい一緒かなと思います。目標があって、現時点ではそこに届かない自分がいる。何が足りないのかを分析して、何をすれば埋まるのか考えて、具体的な行動をしていくことは同じですね」

毎日のように“同じ作業”をしているからこそ、すぐに言葉として他人に伝えることができるのだろう。そんな平井はまだ世間でそれほど知られていないが、今、注目のランナーだ。9月上旬に行われた日本インカレ1万mで2位に食い込み、関東勢をザワつかせている。

「関東勢も大したことないと証明したい」

箱根駅伝の人気もあり、有力ランナーが関東の大学に集結。関東勢と他地区の実力差は大きく、11月の全日本大学駅伝では関東勢の上位争いが当たり前の光景になっている。他地区の大学はまったく太刀打ちできない状況なのだ。近年は個人としても関東勢のエースたちと対等に渡り合える選手は出てこなかった。それが「大学日本一」を決める大会で、全国的には見慣れないユニフォームの選手が上位争いを繰り広げたのだ。

気温28度、湿度64%。残暑の中で行われたレースは前回覇者のダニエル・ムイバ・キトニー(日大)を中心に進んだ。4000mを過ぎて平井が揺さぶりをかけると、強豪校の選手たちが続々と後退する。トップ集団は5000mを14分13秒で通過した。6000m過ぎにダニエルが抜け出すと、平井もほかの日本人選手を突き放して、単独2位に浮上。その後も平井は自分のペースを刻んで、自身の大幅ベストとなる28分36秒72をマークして、日本人トップに輝いた。

京大生ランナーの活躍は、メディア関係者たちも騒然とさせた。「3位が目標でしたけど、ウッカリ日本人トップになってしまいました」と平井は集まった報道陣を笑わせると、「自分よりも大したことないのにマスコミに取り上げられて、芸能人きどりになっている選手もいます。僕より弱いくせに……と心の中では思っていたので、ここで(関東勢が)大したことないことを証明したいと思っていました。

ただ、僕も『京大なのにすごいね』と言われるのは嫌です。条件つきではなく、自分が早稲田大の選手でも、駒澤大の選手であっても、『強いね』と言ってもらえるような選手になれるように、力をつけていきたいです」と言い切った。

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