箱根駅伝予選、通過と敗退「涙の分岐点」 なぜ常連・東農大は負けたのか

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予選通過と敗退の壁。どこに分岐点があったのか?(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

秋晴れの澄み切った青空が、時に恨めしく感じることがある。10月18日に行われた第91回箱根駅伝予選会。筆者の母校の東京農業大学(以後、東農大)が敗退した。通過ラインまでの差は49秒。ひとり換算でわずか「5秒」のタイム差だ。スポーツライターとして、悲しみに沈む後輩たちを取材するのは本当につらかった。

東農大は90回大会(2014年)まで7年連続69回の出場を誇る伝統校だ。1年前の予選会では歴代3位の好タイム(10時間04分35秒)で堂々のトップ通過を果たしている。今季は前半シーズンこそ振るわなかったものの、選手たちは47日間の夏合宿期間中に目標としていた「1500km」を走破。予選会エントリー選手の1万m上位10人の平均タイムでも4位(29分28秒36)につけており、岩瀬哲治監督も「戦力的には昨年と同じぐらい」と話すほどの状態だった。

客観的に判断しても、東農大は上位通過できるだけの実力はあったと思う。しかし、現実は厳しかった。天国と地獄を隔てた「49秒」の差はどこにあったのだろうか。

箱根予選会のポイントは10番目の選手

箱根駅伝の予選会は通常の駅伝と違ってタスキを用いない。各校10人以上12人以下が20kmレースに出場し、上位10位までに入った選手の合計タイムで争われる。晴れ舞台へのチケットは「10枚」だ。

過去にも通過確実と見られていたチームが敗退するなど、箱根予選会の戦いはなかなか難しい。今回、東農大はキャプテンの浅岡満憲が個人総合4位(59分22秒)、竹内竜馬が同13位(60分10秒)と好走。前回チームトップだった戸田雅稀は45位(60分46秒)と伸び悩んだものの、主力3人のインパクトは上位通過校と遜色なかった。しかし、8~10番目の選手のゴールが遠かった。

決戦の3週間前、岩瀬監督は「昨年と7番目まではほとんど変わらないですけど、8~10番目が経験の少ない1、2年生が受け持つことになる。10番目が61分ちょっとでゴールできれば、5~6位くらいでキッチリ通過できるかなと思います」と話していた。実際はどうだったかというと、チーム10番目の選手は63分17秒と大きく遅れた。

その原因のひとつは、中軸選手の離脱にあった。エントリーの段階で、前回チーム4位の土井久理夫が外れ、同5位の岩渕慎矢も直前に膝を痛めてスタートラインに立つことができなかった。前回の予選会で好走した4年生ふたりを欠いたことが大きく影響した。チーム10番目となった原由幸は1年生。予選会までに20km以上のレースは経験がなく、大きな重圧の中で力を出し切ることはできなかった。

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