箱根駅伝予選、通過と敗退「涙の分岐点」 なぜ常連・東農大は負けたのか

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創価大は序盤をゆったりしたペースで入った。5km通過は17位も、10kmで14位、15kmで11位と徐々に順位をアップ。15km地点で10位の東農大との差は1分46秒あったが、最後の5kmで逆転した。総合タイムは目標を1分近く上回る10時間14分03秒だった。

「10位、創価大学」というコールの瞬間に涙を流して喜んだ創価大の瀬上雄然監督は、「今日、新たに創価大の歴史として刻むことができて本当によかったです。集団走が崩れなかったのが勝因だと思います」と話している。

高すぎる目標を掲げて自滅した東農大と、身の丈に合った目標を確実にクリアした創価大。走力ではなく、予選会突破へのプランニングの差が“逆転現象”を引き起こしたのだ。

話を東農大に戻すと、レース後、関係者にあいさつをしたキャプテンの浅岡は「すいませんでした──」とその場に泣き崩れた。予選会20kmで浅岡がマークした59分22秒というタイムは東農大新記録。エースの快走は報われなかった。岩瀬監督は「4年生には申し訳ないと思う」という言葉を何度も繰り返した。

少し落ち着いてから、浅岡に取材をした。「個人としてはよかった。ベストは尽くせたと思います。個人では……」とすぐに声を詰まらせた。チームとしては何が足らなかったのか?と質問すると、「総合力が足りなかったですね。もともとそれが課題だったんですけど。総合力で負けたと思うので。あと、4年生がもっとしっかりしていれば。本来、走るべき選手がスタートラインに立つことができなかった。それがいちばんの敗因だと思います」と話した。そして、「本当に申し訳ないというか。自分たちはもう終わりなので。来年、頑張ってほしいです。自分たちはこれで……」と最後は涙で言葉にならなかった。

3年生エースの戸田にも話を聞いたが、「4年生がいなくなって、来年はもっと厳しい状況になりますが、全員が今日の悔しさを忘れずに1年間やれればチームは変わると思うので、自分が引っ張っていく気持ちで頑張っていきたいです」と夢舞台への復帰を誓った。

箱根駅伝に45回以上出場した大学は13校あるが、そのうち総合優勝していないのが東京農業大学と法政大学だ。正月の箱根駅伝で、わずか50秒差でシード権を逃した法大も今回は予選会で敗退した。エース西池和人の欠場と、箱根5区で快走した関口頌悟が233位(63分57秒)に沈んだのが響き、総合12位というまさかの結果に終わった。多くのOBや関係者たちが待ちわびる“歓喜の瞬間”は両校にやってくるのだろうか。

東農大OBとして、後輩たちには挫折の数だけ強くなってほしいと思う。そして、敗退した理由はどこにあるのか。しっかりと分析して、新たな目標に臨むべきだろう。箱根予選会を取材して、あらためてマネジメントの重要性を学んだ気がする。あなたの「目標設定」は間違っていないか。悔し涙を流す前に、もう一度確認してほしい。

☆お知らせ:本コラムの筆者・酒井政人の著作『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川oneテーマ21)が11月6日に発売予定です

 

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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