箱根駅伝予選、通過と敗退「涙の分岐点」 なぜ常連・東農大は負けたのか

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高速レースに惑わされた大学は苦戦した

筆者はレースの3週間ほど前に、予選会に出場する有力15大学の指揮官たちを取材した。その中で印象的だったのが、高速レースになった1年前の記憶を引きずっていた大学が多かったことだ。前回は東農大が総合10時間04分35秒のトップ通過で、ボーダーライン(10位)は10時間12分29秒だった。今年は8月下旬から涼しくなったこともあり、各大学の仕上がりはよかった。そのため、ほとんどの大学が総合タイムで「10時間10分」というのを通過の目安と考えていた。

実際、今回のトップ通過は神奈川大学の10時間07分11秒で、國學院大學、東海大学、山梨学院大学も総合タイムで10時間07分台とハイレベルだった。しかし、チーム状況にフィットしない高い目標を掲げた大学は苦しんだ。そのギャップが大きかったのが東農大だ。そして当日の「気象条件」もレースに影響したと思う。

スタート時9時35分の気温は14.7度で、昨年(15度)とほぼ同じだった。それが、10時00分には気温が18.2度まで上昇。レース終了直後の11時00分には23.8度まで到達した。強い日差しが選手たちの体力を奪ったことが想像できる。しかも、終盤は起伏に富んだコースが待ち構えており、「ラスト5km」の走りが明暗を分けた。

東農大は3つのグループに分けて、レースを進めていた。浅岡、竹内、戸田の3人は上位で、2つめのグループは「50位前後」で、1年生2人を含む3つめのグループは「100~150位」でのゴールが目標だった。しかし、現実はチーム4番目の選手が79位で、同8~10番目の選手は150位以降に沈んだ。「力に応じた走りをしなさいよ、という言葉をかけていましたが、今日はペースが速かったのか、うまく対応できませんでした」と岩瀬監督。レースの途中経過(チーム順位)を振り返ると、5km通過が8位、10kmが9位、15kmが10位と徐々に順位を下げており、大半の選手がオーバーペースだった。

最後の1枠に滑り込んだのは創価大学

伝統校を蹴落として、最後の1枠を奪取したのが創価大学だ。9月下旬の記録会1万mで11人が自己新をマーク。今回、急上昇の気配を漂わせていた。それでも、予選会エントリー選手の1万m上位10人の平均タイムは13位(29分41秒70)で、同4位(29分28秒36)の東農大と比較すると実力差は少しあった。

では、今回初出場を決めた創価大と敗れ去った東農大の“違い”はどこにあったのか。筆者は「目標設定」にあったと思っている。

創価大は予選会のターゲットを「総合タイム10時間15分」に定めており、ほかの有力大学よりも5分遅かった。そのため、レースのアプローチも違ってくる。

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