他社との販売競争に、社内の出世レース。どんな世界でも“競走”はついて回る。そのレースをどれだけ制すことができるかで、ビジネスパーソンとしての価値が決まると言っていいだろう。今回は日本長距離界に君臨する“皇帝”から、勝ち続けるためのヒントを学びたいと思う。
佐藤悠基(日清食品グループ)ほど「エリートランナー」という言葉がフィットする長距離選手はいない。数々の記録を塗り替えてきた佐藤の頭の中には、こんな言葉がつねに駆け巡っているという。「やるんだったら強くなりたい」。そのための“努力”を中学時代から積み重ねてきた。
3000mの中学記録(当時)を樹立した佐藤は、その後のステージでもさんさんと輝く記録を残す。佐久長聖高校では、5000mで14分06秒99の高1最高(当時)をマークすると、2年時の国体5000mで日本人トップ。3年時には夏のインターハイ5000mでケニア人留学生に挑んで、13分45秒23のインターハイ日本人最高を刻み、12月には1万mで28分07秒39の高校記録を樹立した。東海大学では1年時に5000mで13分31秒72のジュニア日本記録をマークすると、日本インカレ1万mで「1年生V」を達成。そして、箱根駅伝では3年連続で「区間新」をたたき出した。
箱根駅伝でヒーローになっても、その後“消えていった”ランナーは少なくない。しかし、佐藤悠基の存在感は年々増すばかりだ。日清食品グループの“絶対エース”として、チームを全日本実業団駅伝で2度の「日本一」に導くと、日本選手権の1万mでは昨年までに3連覇。日本代表としてロンドン五輪とモスクワ世界陸上にも出場した。そして、今年の日本選手権(6月6~8日)で佐藤はさらなる偉業を成し遂げることになる。
初日に行われた1万mでは、前回、前々回で2位に入っている大迫傑(日清食品グループ)のロングスパートを蹴散らし、翌日の5000mではラスト1周の勝負で、学生屈指のスピードを誇る村山紘太(城西大学)を簡単に沈めた。両種目とも優勝を狙う選手は“皇帝”の動きを徹底マーク。「勝機」をうかがいながらレースを進めるが、どのようなかたちに持ち込んでも佐藤には通用しなかった。
1万mで4連覇を飾った佐藤は、翌日の5000mでは「3000mぐらいで余裕があったので、今日は早い段階で勝てたかなと思いました」と話すほどの“余力”があった。1万mと5000mのWタイトルは6年ぶりの快挙で、連戦での長距離2冠は価値が高い(ほかの5000m上位者は種目を1本に絞っていた)。レース後、佐藤は「世界を目指してやるからには、こういう大会に勝つのは当たり前ですし、学生に負けるわけにはいきません」と言い切った。
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