慶応が「IT入試」を導入する深い事情 村井純教授、「IT教育のここが足りない」

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――そうだとすると、何をやらなければならないのでしょうか?

プラットフォームをどうやって構築するかという話と、プラットフォームの上でどんな問題を解いたり、どんな課題に挑戦するかという点がありますが、いずれのことにもある程度のプログラミングやデータ処理の力が必要になります。私は、この2つの力を全員がつけるべきだと思っています。

たくさんのデータに自由にアクセスできるのが、インターネット前提社会。ネット上で何かを見つけ出すことに価値があるようによく言われますが、それよりも重要なのは、データを大量に集めて分析をしたり、データを見たときにそこにある問題点を発見できることです。オープンで、そして共通の基盤を作るという考え方に重要性があり、それがソフトウエア開発などに通じているのだと思います。

「よってたかって」でやるしかない

――そもそも、今の日本の教育は駄目なのでしょうか。

そんなことはありません。学習指導要領はそれなりによくできているし、学校の先生の能力も高いと思います。ただ今後は、国語や算数の先生はもちろん、音楽や美術の先生も、ソフトウエアが使えればいいなと思っています。とはいえ、先生には新しいことをやる時間がなくて、なかなか大変なのですが……。

一方、公立学校でも校長先生がイニシアティブを取って、IT教育を推進している例もあります。一般に日本におけるIT化の弱点は、やはりトップの意思決定が鈍いからだと思っています。それは教育の世界でも同じ。校長がやる気になれば、誰も止められないはずです。

――どうやったらIT教育は普及しますか?

これからのIT教育は、街ぐるみ、企業ぐるみ、いわゆる「よってたかってモード」でやる必要がありますね(笑)。教育は社会のミッションです。自分が住んでいる地域の教育責任は、地域の人たちがある程度持たなければならない、というような気持ちを持つことが重要ではないでしょうか。

昨年まで10年間、小学校のホームページコンテストを開催しました。全国小学校甲子園のようなイベントです。全国に支社のある保険会社と協力して、勝手に小学校のホームページを見て審査するということをやったのですね。

審査基準は、子どもたちの生き生きした姿が出ているか、定期的に更新をしているか、地域と密着してホームページを作っているかという点です。審査員として1000人の社員を出してくださったIT企業もありました。

ただ、始めた当初は「子どもの顔が全国に広がったらどうしよう」という心配からか、小学校にコンテストの案内をお知らせしても断られていたのです。ただ、県ごとに優勝校を決めて、表彰したり、協賛企業から賞品を出したりして盛り上げていって、始めて5年経った頃、文科省から大臣賞を出したいと言われるようにもなりました。

私は官が中途半端に入ることが嫌だったので、その旨伝えたところ、「じゃあ、全部の省庁を呼んできます」と言われ、各省から大臣賞を出すと言ってきました(笑)。ありがたいことでした。

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