教育現場としては、明らかに異質――。千葉大学教育学部の藤川大祐教授の研究室を訪れると、そう思う人は少なくないだろう。
藤川教授が担当する教職課程の授業では、教育現場の事例を中心に「シリアスゲーム」や「ゲーミフィケーション」といったゲームと社会の関わりについて学ぶ授業を行っている。その場では教育事業最大手ベネッセの教育総合研究所研究員から最新のITと教育の現状が学生たちに向けて語られるだけではなく、これまでの授業では決して教壇に立たなかったような人、ゲーム会社のエンジニアやデザイナーが、ゲームの作り方について教鞭を振るう。
彼らのカジュアルな言葉遣いや服装は、学校文化に近いと言われる教育学部にしては、いい意味で違和感がある。教育現場で「ゲーム」という単語はまだまだアレルギー反応がありそうだが、それにしてもなぜ教職課程の授業にゲームを取り入れるのか。「教育×ゲーム」に未来の可能性はあるのか。藤川教授に話を聞いた。
04年に起きた佐世保の事件がきっかけ
――藤川研究室を訪れて、ある意味、異色ともいえるIT教育に驚きました。そもそも藤川先生が、教育という文脈の中でITを意識したのはいつですか?
95年くらいからネットのことは意識していて、97年頃から前職の名古屋・金城学院大学情報文化学科でメディアリテラシーについて教えていました。本格的にやらなければと考えたのは、2004年に起きた長崎県佐世保市で当時小学6年生の児童が同級生を殺してしまうという事件がきっかけです。
このときに、子どもたちがネットで発信していて、そこでトラブルが起きていたということが報じられました。子どもがネットで発信することが深刻な事件につながるということを、私たちは初めて経験したわけです。これ以降、ネットでのコミュニケーションについて子どもが学ぶ授業や教材が強く求められるようになりました。
――教育学部で、大学2年生以上を対象に「メディアリテラシー教育演習」を行っていますね。
はい、この授業では、2013年度から学校現場で使えるゲームアプリを作る活動を行っています。演習の期間は後期の半年、全15回。正式な名称は「授業実践開発演習I/III」と言います。年によって数字を変えています。通常、同じ授業は大学では2回受講できないのですが、学生には演習授業を2回履修してもらえるようになっています。2年続けて履修する学生は実際に多いです。
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