今年度からはスーパーグローバルハイスクール(SGH)にも指定され、その取り組みも加速している。
昨年は、生徒がグローバルに触れる機会を増やすという目的で、2年生全員がシンガポールを訪問。シンガポール国立大学の学生に地域課題解決策について英語でプレゼンするという研修を行った。世界最先端の島といっても過言でないシンガポールと、「最後端」の島・海士町。生徒たちは英語が話せなかったり、シンガポールとの環境の差などを感じ、悔しい思いをしたというが、それもまたいい機会になったと島前高校の常松徹校長は話す。
現在は、2013年から始まっている「新魅力化構想」に沿って、高校存続という当初の目的から、島前地域を持続可能なものにしていくためにはどうしたらよいか、産業面や医療、福祉、観光など様々な分野の地域の担い手を作るにはといった人材の育成に着手し始めている。
離島のデメリットをどう乗り越えるか
だが、高校がいくら魅力的になったとしても、やはり離島であるデメリットは存在する。
隠岐島前高校魅力化コーディネーター・大野佳祐さんはこう話す。
「離島であることのデメリットは沢山あります。例えば、部活動は遠征がつきものですが、離島であるためにとてもコストがかかるんです。それは金額的にも時間的にも。シンガポールへの研修の際には、2泊4日の旅になりました。現地の滞在時間よりも移動している時間の方が長いこともあります。また、隠岐國学習センターができるまでは、塾や予備校と言われるものもなく、生徒は自分自身で勉強する必要がありました。都会ならいくつもあって、自分にあったものを選べますよね」
しかし、そのデメリットを埋めようとする努力も進んでいる。
隠岐國学習センター・副長で、教育ICTディレクターを務める大辻雄介さんは、ITによって地理的教育格差を埋められる面もあり、「かゆいところに手が届く授業」が展開できているという。
大辻さんはベネッセを退職して移住してきたIターン組だ。彼は今、中ノ島、知夫里、西ノ島3島のほか、兵庫県の離島である沼島(ぬしま)に住む中学3年生向けの遠隔授業を週2回、ギガキャストという遠隔授業システムを使って配信している。
教科の勉強は積み重ねが重要だが、大辻さんは子どもたちが苦手意識を持ちやすい英語と数学を強化しているという。具体的には、英語は群馬県にいる先生が担当し、大辻さんは数学を担当する。子どもたちは自宅のパソコンやiPadを用いて勉強する。遠隔授業は、どこに住んでいても参加できるということだけでなく、どこからでも教えられる時代になっているのだ。
大辻さんは、次のように話す。
「海士町の子どもたちは島前高校に入ろうと思った時、比較的簡単に入学できてしまうため、受験勉強の意義を感じる機会が少ないです。これは全国どこの離島でもあることですが、島前高校の場合は県外から入学してくる子どもたちが2倍を越える難関を乗り越えて入って来ています。そのため、入学時に島前の子どもと県外の子どもとでは、それまでの学習環境に大きな差が出てしまいます。しかし、遠隔授業を用いれば、それを補完できると考えています」
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