なぜイライラしている部下の「ガス抜き」はしないほうがいいのか? 《ダメな上司ほど傾聴したがる》"傾聴の押し売り"がもたらす悪循環

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部下の悩みや愚痴を聞いて“ガス抜き”するのが上司の役目だと思い込んでいるかもしれませんが、実際は…?(写真:mits / PIXTA)

「まさか部下のMさんが、退職届を出してくるなんて……」

ある中堅メーカーの課長は、かなり落ち込んでいた。

この課長は面倒見のいい上司として有名だった。部下のMさんが悩みを抱えているようだったので、率先して「話を聞くから」「ガス抜きしたら?」と声をかけ続けた。しかし、その結果、Mさんのイライラは解消されるどころかMAX状態に。

なぜ、課長の姿勢は逆効果になったのか?

実は、イライラしている人への「ガス抜き」には大きな落とし穴がある。そのことを、この課長は理解していなかったのだ。

そこで今回は、なぜ「ガス抜き」は危険なのかを解説する。

部下の「ガス抜き」は上司の役目?

その課長は、部下思いで有名だった。毎朝必ず部下1人ひとりに声をかけ、定期的に1on1ミーティングも実施した。そしてマネジメント研修で学んだ「傾聴」を忠実に実践していた。

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しかし「傾聴」にはタイミングが重要だ。自分視点で傾聴しようと考えると、かえって相手との関係を傷つけることになる。

ある日、部下のMさんが険しい表情で席に座っていた。どうやら他部署とのやり取りでトラブルがあったらしい。課長はすぐに声をかけた。

「Mさん、何か困ったことでもあった? 話を聞くよ」

Mさんは一瞬戸惑った表情を見せた。が、すぐに「いえ、大丈夫です」と丁寧に断った。しかし課長は引き下がらない。「遠慮しないで。話すとラクになるから。会議室で聞くよ」

なかば強引に会議室に連れて行かれたMさん。仕方なく経緯を話し始めた。「実は、企画書の件で総務部から指摘を受けまして……」

課長は身を乗り出して聞いた。「それで? どんな指摘だったの?」

次ページ部下の「ガス抜き」ができたと喜んだのも束の間…
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