なぜイライラしている部下の「ガス抜き」はしないほうがいいのか? 《ダメな上司ほど傾聴したがる》"傾聴の押し売り"がもたらす悪循環

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最初はためらっていたMさんだったが、次第に心を許したのか、話すうちにだんだんと語気が強くなっていった。

「フォーマットが違うって言われたんです。でも、事前に確認したときは何も言われなかったんですよ」

「それは大変だったね」

課長の共感を得ると、Mさんの話はさらにヒートアップした。

「そうなんです! しかも、担当者の態度が本当にひどくて……」

30分後、Mさんはスッキリしたような表情を見せ、「課長、話を聞いてもらって、本当にありがとうございました」「おかげで気持ちがラクになりました」。そう言って感謝した。

「ストレスはためちゃいけないよ。たまにはガス抜きも必要だから」「私でよかったら、いつでも聞くよ」

課長は、Mさんの「ガス抜き」ができたと、かなり満足していた。

「ガス抜き」には強い副作用がある

ところが、事態は悪化していく。

Mさんと総務部との関係がみるみるうちに険悪になっていったのだ。そのたびに課長はMさんの「ガス抜き」に付き合ったのだが、ある日、事態は急転する。課長が総務部に呼び出され、こう言われたのだ。

「君の部下のMさん、少しおかしいんじゃないか? 根も葉もないことを言って難癖をつけてくる」

こんなことを言われては、課長も黙ってはいられなかった。

「難癖をつけてきたのは、総務部のほうではないですか。聞くところによると、Mさんにお願いした企画書について、理不尽な注文をしたとか」

「そんなことはない!」

総務部のメンバーと直接やり取りして分かった。どうやらMさんの言い分は、かなり誇張されたものだった。それをMさんに確認すると、素直に非を認めた。

「知らず知らずのうちに話を盛ってしまっていました。申し訳ありません」

しかし、なぜかMさんは怒りが収まらなかったようで、その2カ月後に退職してしまったのだ。

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