このような上司は少なくない。よかれと思って部下の話を聞こうとするのだが、逆に「傾聴の押し売り」と受け止められるようなケースがある。
どうすればいいのか。答えはシンプルだ。
部下が「聞いてください」と言ってきたときだけ、耳を傾ければいい。
人には感情を処理する自分なりのペースがある。すぐに誰かに話したい人もいれば、1人で整理したい人もいる。時間をおいて冷静になってから相談したい人もいるだろう。
それなのに、「話を聞いてあげる」という上から目線で迫られたらどうなるか? 自分のペースを乱され、無理やり感情を吐き出させられる。その結果、かえって気持ちが乱れてしまうのだ。
実際、優秀な上司ほど「待つ」ことができる。部下の様子は気にかけているが、むやみに介入しない。そして部下から「ちょっと相談があるんですが」と言われたとき、初めて時間を作る。
このタイミングなら、部下も自分の中である程度整理ができている。何を相談したいのか、どんなサポートが必要なのか。それが明確になっているから、建設的な対話ができるのだ。
自分視点の傾聴は相手を傷つける
傾聴したがる上司に共通する特徴がある。それは「自分視点で話している」ということだ。
「部下のために」と言いながら、実は自分の満足のために聞いている。「話を聞いてあげている自分」に酔っている。「傾聴できる良い上司」というセルフイメージを守りたいだけなのだ。
本当の相手視点とは何か。それは、相手が今何を必要としているかを見極めることだ。話を聞いてほしいのか、1人にしてほしいのか、具体的なアドバイスがほしいのか、ただ見守ってほしいのか。
これを判断するには、相手をよく観察する必要がある。表情、声のトーン、態度。これらから相手の状態を読み取り、適切な距離感を保つ。それが本当の意味での「相手視点」なのだ。
自分視点の話し方から、相手視点の話し方を変えていこう。視点を切り替えるだけで、一段の上の話し方ができるようになる。これこそが新著『わかりやすさよりも大切な話し方』の最大のテーマである。
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