なぜイライラしている部下の「ガス抜き」はしないほうがいいのか? 《ダメな上司ほど傾聴したがる》"傾聴の押し売り"がもたらす悪循環

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さて「ガス抜き」には、どんな副作用があるのか? 代表的な副作用は次の2つである。

(1)「追体験」をさせる

(2)話に「尾ひれ」がつく

まず、「追体験」だ。

人は嫌な体験を思い返すだけで、再びその感情を味わってしまう。脳の思考プログラムは、過去の体験の「インパクト×回数」で作られる。体験はたった1回であったとしても、思い返すだけで、その体験を再び味わうことになるのだ。

たとえば実際の体験がインパクト【100】だとしよう。このリアル体験は1回しかない。ところが思い返すことで、それなりのインパクトのある体験をもう一度味わってしまうものなのだ。これを『追体験』と呼ぶ。

少し思い返すだけなら、【10】程度のインパクトかもしれない。しかし「ガス抜き」だからといって、上司から根ほり葉ほり聞かれ、詳細を話しているうちに、そのときの状況がまざまざとよみがえってしまう。そのためインパクトが【70】や【80】に跳ね上がってしまうのだ。

Mさんの場合もそうだった。総務部とのやり取りで感じた不快感は、当初ちょっとしたものだった。ところが、それを課長に話すことで、もう一度その場面を鮮明に思い出してしまった。

視覚的な記憶、聴覚的な記憶が組み合わさり、まるでその場にいるかのような追体験をしてしまった。

そのため、話しているうちにだんだんと腹が立ってきてしまったのだ。しかも課長が「それはひどいね」と共感してくれたことで、「やっぱり自分は被害者だ」という思いが強化されてしまった。

結果として、「ちょっとイラッとした」程度だったものが、「許せない出来事」へと変わってしまったのだ。

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