ファミレスが登場したのは1970年代。1969年にはロイヤルホストがセントラルキッチン(1カ所の工場で料理をまとめて作る方式)をはじめ、1970年にはすかいらーくの1号店が国立に開業。1973年にはサイゼリヤの1号店が、1974年にはデニーズの日本1号店が開業する。
このファミレスを支えたのが「中流家庭」だ。
この時期はまだ日本全体の格差は実態としても少なく、意識としても「中流」意識は根強かった。実際、この時期に自身を「中流」に属すると回答する日本人は増加の一途をたどっていて、名実ともに「中流家庭」が確かに存在したのが、ファミレスの勃興期に重なる。
しかし、その後、1980年代頃より格差は拡大。2000年代になると「下流社会」などといった言葉で、この格差が明確に意識されるようになる。さらにはリーマン・ショックによる不景気などもあって、いよいよ「一億総中流」は崩れ去っていく(橋本健二『階級都市』)。
ファミレスを支える単身世帯の格差も拡大傾向
また、ファミレスを支えてきた「ファミリー」が減少傾向にあり、単身世帯の利用が増加したことも二極化に拍車をかけた。
ファミレスが普及し始めた1970年代段階では、家族の誰かと世帯を構成する親族世帯が全体の約80%を占めていて、ファミリー層の需要はきわめて大きかった。しかし、それ以後、親族世帯の割合は減り、特に「夫婦と子から成る世帯」は、1985年をピークに減り続けている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」)。
必然的に単身世帯の利用が多くなっているのだが、注目すべきは単身世帯は、より貧富の格差が激しいことだ。
2023年の「家計の金融行動に関する世論調査」では、単身世帯が保有する金融資産の平均は941万円だが、その中央値は100万円である。つまり、一部の高所得単身層が巨額の金融資産を持っており、それ以外の単身世帯は金融資産をほとんど持っていない、二極化が進んでいる。
となれば、それに合わせてファミレスも変化せざるを得ない。大企業に勤めるちょっとリッチな独身貴族がランチでロイヤルホストに行く一方、Uberの配達に行く独身男性がガストでランチをする。もちろんどちらが上でどちらが下という話ではないのだが、現実として、そういった二極化が進んでいるのだ。
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