例えば、『花束みたいな恋をした』。本作は、坂元裕二が脚本を書いたラブストーリーで、ファミレスが重要な舞台となる。物語は、ファミレスでの告白からはじまり、ファミレスでの別れ話で終わる。
なぜ、ファミレスだったか。それは、その場所がさまざまなタイプの人を受け入れ、異なる属性の人に利用されてきたからだ。いわば「一億総中流」と呼ばれた時代の申し子的存在だといってもよい。
実際、本作の主人公にはわかりやすい「経済格差」がある。
主人公の一人である山音麦は新潟・長岡の花火職人の子どもで、東京に上京してきてボロアパートに住んでいる。決して裕福とはいえない。一方、もう一人の主人公である八谷絹は広告代理店勤務の両親を持ち、都内の一軒家に住んでいる。
そんな彼らが一時の間、恋に落ちるのは、ファミレスという「平等な場所」があったからこそであり、もしファミレスがなければふたりは恋に落ちなかっただろう……というのはもちろん言い過ぎだが、重要な舞台のひとつだったのは間違いない。
しかし、そんなファミレスに近年、大きな変化が生じている。「誰もが集える場所」ではなくなってきているのだ。
ファミレスで進む「二極化」とは
ファミレスで近年進んでいる変化は「二極化」である。
簡単にいえば、低価格帯路線と高価格帯路線の2つに各店舗が分かれている。どちらにも属さない中途半端な中価格路線の店は業績が芳しくない。
例えば、ガスト。2024年11月に一部メニューの値上げを実施してはいるものの、逆に2023年に一部のアルコールメニューの値下げを実施している。また、9月〜10月には平日限定で対象メニューの値下げも実施。全体としては、「より安く」を追求しているのだ。
さらには、メディアなどでも多く取り上げられて話題となったのが、フレンチコース。
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