ご夫婦はお金に困っていたわけでも、生活が困窮していたわけでもありません。ですが、お金に対する価値観はさまざま。本来なら訪問診療に加えて訪問看護も入れて、Aさんのケアやサポートをする必要がありましたが、それも妻は同様の理由で「いらない」と突っぱねようとします。
そこで、筆者が「指定難病と診断されると、医療費の助成が受けられる」と説明すると、妻の目がキラッと光りました。
「なら、検査して診断してもらおうかしら」
そう、考えがガラッと変わったのです。
Aさんは75歳以上で一般的な所得者だったので、通常でも1割の自己負担で医療を受けられますが、指定難病と診断されると、それ以上に自己負担の上限額が下がります。
その後、Aさんは必要な検査を受け、パーキンソン病と確定診断を受けると、医療費の自己負担額がぐっと減りました。妻も渋ることなく訪問診療や訪問看護を入れられるようになりました。
難病と確定診断されるまでの医療費の自己負担は、訪問診療の費用と薬代で月1万4000円前後。それ以外にも訪問リハビリの費用が介護保険で発生していました。
しかし確定診断後は、訪問リハビリの費用も公的な医療保険の対象となり、トータルでひと月5000円以内に収まるようになったのです。
加えて、それまで失神して転んでしまうことが多かったAさんでしたが、薬を調整したことで、失神はほとんどなくなり、随分と生活に落ち着きを取り戻したようでした。
必要な医療につながらない問題も
Aさんの妻のように、医療費を理由に本来受けるべき医療をセーブして(させて)しまう人がいます。このケースは医療費の制度についてよく知らなかったこともあり、「お金がかかることはなるべく避けたい」との思い込みが優先し、必要な治療につながっていませんでした。
もしあのまま、本人が診察を受けずに薬をもらい続けていたら、転倒による骨折などで、早期に寝たきりになっていた可能性も十分にあります。
今回は、ケアマネジャーが機転を利かせて動いてくれたことで事態を把握できたわけですが、何とかまだ間に合うタイミングで適切な医療につなげることができてよかったと思います。
なお、診断や治療には、基本的にガイドラインに沿った標準的な医療が行われていますが、医師の経験や考え方によって、見解が異なったり、診断を確定するのに時間がかかったりする場合もあります。
主治医の意見に不安や疑問を感じたら、セカンドオピニオンで別の医師の意見を聞くのもいいでしょう。
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