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アトピー患者が新治療・薬にたどり着けない事情 処方の手間、「顧客を失いたくない」心理…

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医師にとって、処方の手間や顧客を失いたくない心理がネックに。

炎症している腕を掻く女性
新治療法が確立されているにもかかわらず、昔ながらの塗り薬を延々と処方されているアトピー患者が少なくない(写真:PIXTA)

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人の命を左右することもある医療情報。SNS上では私たちの不安につけこんだ、根拠に乏しい情報があふれている。本特集のタイトルは「不安につけこむ『医療情報』の罠」。何を信じ、何を疑えばいいのか。

「新薬の存在はSNSで知った。使えるかどうかを医師に尋ねたら、治療が始まった」

アトピー性皮膚炎の薬の体験談や、患者の悩みに寄り添う発信をユーチューブで行うライジンさん(本名は田辺雷次郎)。生まれながらのアトピーで40年以上苦しんできた経験を持つ。

アトピーは、炎症やかゆみによるかきすぎによって、皮膚からの出血や体液の浸出(しんしゅつ)、皮膚がボロボロと剥がれるといった症状を伴う。ライジンさんは従来の治療法では満足のいく結果が得られずさまざまな病院を渡り歩き、時には民間療法を試したこともあった。

新しい薬を試そうと思ったきっかけは、アトピーによる皮膚の炎症から、感染症を発症したことだった。感染症は治ったものの、アトピーがさらに悪化することへの不安が募った。

そこでSNSで知って気になっていた注射薬「デュピクセント」の名を医師に伝えた。2018年に登場した、中等症・重症患者向けの薬だ。「じゃあやってみますか」と処方につながった。かゆみや乾燥が和らぎ「お風呂で肌が水をはじく」ほどに肌の状態が改善した。

半世紀にわたって大きな進化がなかった

アトピーは見た目だけでなく、強いかゆみによって睡眠が浅くなったり、仕事を辞めざるをえなくなったりするなど人生にも大きな影響を及ぼす疾患だ。にもかかわらず、治療法は1950年代から半世紀にわたって大きな進化はしなかった。

今でも標準的な治療法は、炎症を抑えるステロイド剤を使い、炎症が収まれば保湿剤や抗アレルギー薬でコントロールするというもの。しかし毎日薬を塗るよう指示されても、症状が回復するにつれて中断してしまう人もいる。かゆみが十分収まらずにかいてしまい、再び症状が悪化してしまうケースも後を絶たない。そもそも症状が重い患者は、薬を塗るだけでは改善しないこともある。

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