6年後の2030年、認知症の患者数が推計523万人に上るとされる。これは高齢者のおよそ14%、およそ7人に1人に当たる数で、増加する認知症患者をどう支えるかが大きな課題となっている。
これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)の連載。今回は、老老介護の事例をもとに、どんな支え方や言葉がけが必要か、困ったときにはどこに相談すればいいかを、みていきたい。
「診断された」記憶がない
病気の妻を介護しながら2人で暮らしているAさん。私はAさんの妻の在宅医として、Aさん家族と関わるようになりました。
Aさんは10年ほど前に認知症と診断されています。ただ、進行が緩やかで、生活に大きな支障をきたしていないこともあり、特に治療を受けることなく過ごしてきました。
認知症と診断されたとき、Aさんも医師から説明を受けていますが、その説明自体を忘れており、自分自身が認知症とはまったく思っていません。そうしたこともあって、妻の面倒は十分に見ることができているという認識でいました。
ところが、それゆえに周囲が困り果てる場面が増えてきたのです。
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