Aさんの妻は、心不全で在宅酸素を使用しており、ほぼ終日、ベッドの上で過ごしています。介護や生活のしやすさを考えると、家の中心にあるリビングに介護ベッドを置いたほうがよく、Aさんもそれに納得してくださいました。
にもかかわらず、ベッドを設置した日、Aさんは「こんなところにベッドがあったら邪魔じゃないか!」と逆上したのです。事前に相談し、了承を得たうえで入れたはずのベッドなのですが、Aさんはどうやら、その話し合いをすっかり忘れてしまったようなのです。
その場に居合わせた介護スタッフが、「お話ししましたよ」「AさんもOKとおっしゃっていたのに」などと言おうものなら、「俺は聞いてない!」と、さらに怒りがヒートアップ。力任せにリビングからベッドを移動させた結果、ベッドが壊れてしまいました。
包丁をちらつかせてケンカ
スタッフに聞けば、こうしたトラブルは“これまでにも何度も起きている”よう。
認知症の影響で、感情のコントロールが利かない場面も出てきており、例えば近くに住む子どもと親子げんかをしたときには、包丁をちらつかせて脅すようなことも何度かあったといいます。
言ったことを忘れるのは日常茶飯事で、「何回も言ったでしょ」と言っても、「歳だからな」で終わるのが常でした。
周りが認知症を疑っても、本人が病院を受診しようとしないケースはよく見られます。本人は日常生活を滞りなく過ごせていると“思い込んでいる”ため、家族が「病院で診てもらおう」と言っても、「必要ない」と断ってしまうのです。
しかし、生活に困りごとが出てきていたら、家族だけで抱え込むのは望ましくなく、できれば専門家の支援につながったほうがいいのです。そのためにも、まずは専門の機関や専門家に相談することが大切です。
Aさんの場合、本人は「できている」と思い込んでいても、子どもたちから見たらできていないことが山のようにありました。
例えば、妻の服薬管理がおろそかになっていたり、受診の予約時間を忘れて出かけてしまったりなどで、いずれも記憶力の低下が原因だと考えられます。
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