終末期の母を「死なさずにすんだ」息子の冷静判断 「最期は家」を叶える前に考えたい治療の可能性

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「母親を死なさずにすんだ」息子の冷静な判断とは…。今回は「人生会議」について考えてみます(写真:polkadot/PIXTA)
「最期はこう過ごしたい」という希望が独り歩きし、“よりよく生きるために必要”な治療を受ける機会を逃すケースがある――。もしものときに望む医療やケアについて、本人の希望が最優先されるあまり、医療現場や家族の間で混乱が起きる場面が見られる。
これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)の連載。今回は、母親の希望を何とか叶えたいと奮闘するあまり、優先順位を見失ってしまった息子のケースを紹介する。

早く帰ってペットに会いたい

大腸がんの末期で、自宅で生活しながら抗がん剤治療を続けていたAさん(女性、63)。もともと「できる限り家で過ごしたい」「延命治療はしない」という意向がはっきりしている患者さんで、自宅でペットと過ごす時間をとても大切にしていました。

あるとき、Aさんはがんが骨に転移した影響で腰痛が悪化し、緊急入院することに。そこでもAさんは「早く帰って、レオンちゃん(ペットの名前)に会いたい」としきりに訴えていましたが、入院から2日後、Aさんの体調に異変が生じます。

痙攣(けいれん)が起こり、意識が低下したのです。翌日には発熱も見られたことから、感染症の一種である胆管炎を引き起こしている可能性が疑われ、抗菌薬の点滴が始まりました。

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