終末期の母を「死なさずにすんだ」息子の冷静判断 「最期は家」を叶える前に考えたい治療の可能性

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ACPを考えるうえで筆者が提案したいのが、「これだけはやってほしくない」という点を考えてみること。「こうしたい」という希望より、自分が「これは嫌だと思うことは何か」を考えるほうが、イメージしやすい人も多いのではないでしょうか。

「『人生会議』してみませんか」のポスター(厚生労働省ホームページより)※一部加工しています

例えば「意識がないまま、管につながれっぱなしなのは嫌」「治る見込みがないなら、病院に行きたくない」など、これをされると嫌だと思うことを伝えておくのです。もちろん、「こうしたい」というプラス方向から考えるのも手です。

ご自身の“取扱説明書”を作るように、自分がされたら嫌なこと、好きなこと、心地よいと感じることなどを、紙などに書き出してみましょう。家族と話せたら、お互いの価値観や考え方を知るきっかけにもなります。死ぬことを考えるというより、自分たちが今後の人生を、より幸せに過ごしていくために考えるイメージです。

無理に考えようとしなくてもOK

もちろん、「自分の最期について、どうしても考えたくない」という人もいます。

ある調査結果によれば、死の直前まで話し合いを控えることを希望する人は、全体の約20%、つまり5人に1人に当たります。実際、「自分の症状を知らないほうが幸せ」「今日死んでも後悔はない」というスタンスの人も、一定数いらっしゃいます。

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「知りたくない」と考えるのも当然だと思います。ACPの普及に伴い、「自分の最期について知り、周囲と共有し合うのは当たり前」という流れもありますが、それによって本人がつらくなるなら、「考えない」「知ろうとしない」選択もあり。

医療者や介護者から「最期はどこで過ごしたいですか?」と聞かれたとき、無理して答えなくていいことも知っていてほしいですね。

今回お話ししたことは、いずれも最期まで自分らしく、人生を生き切るために大切なこと。年齢にかかわらず、なるべく元気なうちから考えていけば、きっとこの先の人生を考えるうえで大きな助けになるはずです。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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