「新生児取り違え」育ての母は昨年他界 事業畳み20年以上かけて親探し 焦燥の中で自分追い求める男性の今 都知事謝罪も…
東京都在住の江蔵智さん(67歳)は2004年、DNA鑑定により、46歳のときに、両親との間に血縁関係がないことが確定した。
以来20年以上かけて、江蔵さんは実親を探し続けてきた。東京都相手に2度の裁判を行い、事態の進展を訴え続けてきたものの、いまだ実親は見つかっていない。気づけば実親が生存しているのか、確証が持てないほどに時間は経過していった。
名簿業者から10万人近い戸籍を購入
2004年から2006年にかけて東京都を相手取った裁判が結審して以降も、江蔵さんは実親を探し続けた。一審では新生児取り違えが認められ、二審では2000万円の損害賠償請求が認められたものの、肝心の調査は進展が見られなかった。
判決文には、東京都に対して、資料の開示請求など調査を要請する旨の記載はなく、役所に申請しても「法的な拘束力はない」「相手方の家庭を壊すかもしれない」と突き返される。
実親の存在が確かになったからこそ、自身の出自を確かめたい気持ちは膨らみ、進展が進まない状況にもどかしさが募っていく。
裁判と同時並行で、独自でも精力的に動いた。当時は閲覧可能だった住民基本台帳(区域内の住民票をまとめた公簿)を約35万人分調べ上げ、同時期に生まれた人物の現住所を探しては、一軒一軒自宅を訪ねるなど自身の出自を追い続けた。調査範囲を広げるため、名簿業者から10万人近い戸籍を購入した。
対して、これまで長い時間を共にしてきた家族は、実親を追い求めている江蔵さんをどう見ていたのか。その胸中は複雑だったはずだ。
「父は『いまさら会ってもしょうがないじゃないか』と、弟は『兄は一人で十分だ』と言葉をかけてくれました。それは『本当の家族は私だけなんだ』と言われているようで嬉しいものの、同時にどこか距離も感じられる感覚でした。もし仮に、私が取り違えの相手を見つけたとしても、父や弟はきっと名乗り出ないでしょうね」
当然ながら、新生児取り違えの問題は、本人だけでなく周辺の家族の人生も巻き込む。実親探しが難航しているのも、相手が名乗り出るのを拒否している可能性も十分に考えられる。いきなり見ず知らずの他人が親族だった、その事実を受け入れるのに抵抗を覚えるのも無理はない。


















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