「新生児取り違え」育ての母は昨年他界 事業畳み20年以上かけて親探し 焦燥の中で自分追い求める男性の今 都知事謝罪も…
そのなかで唯一、家族で共感してくれたのが母だった。母もまた実の息子を見てみたいと懇願しており、裁判の意見陳述でもその旨を伝えている。家庭内で血縁の話ははばかられたが、母と2人になった瞬間には進捗を報告することもしょっちゅうだった。
家族との間で割り切れない感情を抱えながらも、同居していた両親はすでに亡くなり、江蔵さんは現在1人で暮らしている。それだけ事態が膠着していることを物語っていた。
「非常にもどかしい思いをしている」
2021年11月には、2度目の提訴に踏み切った。前述した1度目の裁判では損害賠償請求を求めて闘ったが、今回は「生みの親を特定する調査を行わないのは人権侵害」として、憲法13条「出自を知る権利」に抵触すると、主張を変えて再び東京都を提訴した。
2025年4月には判決が下り、江蔵さんの主張が一部認められる形となった。東京地裁が、都に調査を実施して、その結果を報告するよう命じる判決が下りたのだ。判決後には、小池百合子都知事は会見で謝罪を述べ、都も控訴することなく判決が確定した。
一方で、江蔵さんは現状を「非常にもどかしい思いをして、ストレスを抱えている」と吐露する。
「裁判が終わった当初は、お盆までには取り違えの相手が見つかると期待していました。それが延びに延びて、いまや年を跨いでいる状況です。定期的に都の担当者とコンタクトを取っていますが、このやり方では時間がかかると目に見えてわかります」
では、判決で都が要請された調査方法は、どのような内容だったのか。
端的に手順を踏まえると、下記の手続きが行われている。
江蔵さんいわく調査の該当者は200人以上に及ぶが、当然そのすべてから回答を得られたわけではない。回答を拒否したもの、無回答なもの、連絡すら気づいていないもの、広げれば出生届を提出していないケースも想定される。
こうした音沙汰のない該当者に対して、江蔵さんは直接訪問を試みている。一方で、役所の対応は手紙でのやり取りにとどまる。当事者である江蔵さんからすれば、第三者である行政の対応は物足りないと嘆く。


















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