「カンボジアの関係機関の協力を得て、大規模な国際賭博・詐欺グループの頭目である陳志の身柄を確保し、成功裏に中国に移送した。これは中国とカンボジアの法執行協力による大きな戦果だ」
1月8日、中国公安省は陳容疑者の逮捕と中国送還についてウェブサイトでそう発表した。その前日、カンボジア内務省は同じくウェブサイトで、陳容疑者を含む3人の中国人を逮捕し、中国当局に引き渡したことを明らかにしていた。
カンボジア内務省の説明によれば、陳容疑者らの逮捕は中国当局との数カ月にわたる共同捜査を経て、1月6日に執行された。さらに同省は、陳容疑者が過去に取得したカンボジア国籍を、関連法規に基づいて2025年12月に剥奪していた事実も公表した。
表の顔は複合企業の会長
陳容疑者の表の顔は、カンボジア有数の複合企業である太子集団(プリンスグループ)の会長だ。同社は不動産開発、ホテル、ショッピングセンター、スーパーマーケットなど様々な事業を手がけ、太子銀行(プリンスバンク)という金融機関まで傘下に持つ。
その裏で、陳容疑者は国際特殊詐欺や違法オンラインカジノから莫大な利益を上げる「闇の帝国」を築き、絶対的なボスとして君臨していた。
中国の裁判記録やアメリカ司法省の起訴状などによれば、陳容疑者は違法カジノの開設、(インターネットや電話を悪用した)通信詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)など複数の組織犯罪を主導していた。一説によれば、彼の個人資産は総額600億ドル(約9兆4800億円)に上るという。
「この男は(カンボジアの)政官界とその周辺の人間関係を利用して一気にのし上がってきた。政策や人脈の動かし方、荒稼ぎの巧みな手さばきは想像を絶するレベルだ」。財新記者の取材に応じたカンボジアの華人社会の裏側に精通する人物は、そう舌を巻いた。
現在38歳の陳容疑者とは何者で、闇の帝国をいかにして作り上げたのか。そして関係国の司法当局は、どのように彼を追い詰めていったのか。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら