前回の記事では「哲学は科学ではない」と「哲学は文学ではない」ことをテーマにしました。
『哲学の教科書』(講談社学術文庫)に倣うと、あと「哲学は芸術ではない」と「哲学は宗教ではない」が残っていますが、どちらもはるか昔の心境であって、いまから読み直すとたいしたことを書いていないので、今回は「哲学における指導と美術制作(油絵)における指導」というテーマで、お話ししようと思います。
と言いますのは、じつは私は29年前に近所の絵画教室に通い、油絵を習い始めました(その後ずっと続けていたわけではなく、半分はサボっていた)。その間に先生(杉田五郎)は大躍進して、ニューヨークの個展で大成功し、ワシントンポストにも大きく取り上げられ、さらにジョージ・ワシントン大学に500号の作品が買い上げられ永久保存となりました。
哲学と油絵、教え方にどんな違いが?
私は小学生のころから絵を描くのが好きで、何度も写生大会に入賞していましたから(その程度のことですが)、10年経っても、20年経っても、次々に後輩に追い抜かれても、私は教室をやめることはなかった。そして、ほとんど先生に賞められることのないまま20数年が経ちました。
先生はずっと、「東京展」という上野の東京都美術館で毎秋開催される公募展の運営委員として活躍していましたが、普通は絵画教室に在籍10年ほどで出品の声がかかるところ、私の場合は25年経ってやっと「出品してみないか」というお声がかかりました。
昨年になって、何かの拍子に、浅はかにも「出してみようかなあ」という気になり、一気に100号2枚を描き上げました。先生はそれなりに「いいですよ」と賞めてくれましたが、当日会場に展示されていた自作を見てがっかり、ほかの出品作品と並ぶと、こぎれいに仕上げていているだけの素人くさい力の抜けた作品です(自分では気に入っている?)。
さて、そのショックのあまり油絵をやめようかなあと思いながらも、またずるずる教室に通っているうちに、はや1年が経ち、私はちょっと前からまた9月の東京展に向けて制作を開始したのです(みなさん、ネットで調べていらしてください)!
ずいぶん「まえおき」が長くなってしまいましたが、今回語りたいことは、哲学と油絵の教え方の違いです。
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