国立大を「授業料値上げ」に追い込んだ「真犯人」 大学はただ「ピーピー騒いでいるだけ」なのか

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授業料値上げとは、結局、こういうほとんどヤクザまがいの金の取り立て以外のなにものでもないのである。

大学を「使いつぶせ」?

しかも、「国家予算はべらぼうには増えていないのに」と言っているが、運営費交付金の総額は、年間約1.1兆円。これを2005年以来、約100億円ずつ削ってきたにすぎない。累計でも、削減額はわずか約1400億円だ

他方で、政府はこのかん、たとえばリニア新幹線の開発に約3兆円、半導体企業には約4兆円という、巨額の予算を投入している。2020年の東京オリンピックでは約3600億円を国が負担し、2025年開催予定の大阪万博の負担費用も、現況すでに1600億円を上回る。

けっして、金がないわけではないのだ。

政府が、国立大学の運営費交付金を削り続け、トイレを直す金もないほど困窮させても、なお断固として増額しようとしないのは、けっして、金がないことが理由なのではない。

では、何が理由なのか。

それは、次の言葉を見れば、はっきり分かる。

先に挙げた「大学改革」のいわば「黒幕」であるCSITの中心人物(唯一の常勤委員)、上山隆大氏は、2020年のある会合において、こう発言している。

世界で最もイノベーションに適した国をめざして、大学という資源を使い尽くす。完全に隅々まで使いつぶして、日本に貢献すべきだ。

これが、「大学改革」のホンネにほかならない。

大学の研究と教育は、彼らにとって「振興」すべき対象ではない。「使いつぶす」べき対象なのだ。

国立大学の授業料を現在の3倍にすべきだと主張する伊藤氏は、そのもう1つの理由として、「高度な人材を育てるにはお金がかかる」ということを挙げている。だったら、国が運営費交付金を増やして、大学の研究・教育を振興すべきと考えるのが当然だ。

だが、彼らはそうしようとはしない。逆に、国民からさらに金を巻き上げて、それをグローバル企業にとって都合のよい研究開発と人材育成に注ぎ込もうとしているのだ。

「亡国」というほかない。

「国立大学の授業料値上げ」という政策の真意は、このように、一部のグローバル企業のために、大学を使いつぶし、国民を使いつぶすということにあるのだ。

国民は、騙されてはいけない。これを推進している連中は、いっけん、どんなもっともらしい理屈を並べていようと、その本質は「国賊」であるとみなすべきなのだ。

古川 雄嗣 教育学者、北海道教育大学旭川校准教授

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ふるかわ ゆうじ / Yuji Furukawa

1978年三重県生まれ。京都大学文学部および教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。現在、北海道教育大学旭川校准教授。専門は、教育哲学、道徳教育。著書に『大人の道徳ーー西洋近代思想を問い直す』(東洋経済新報社、2018年)、『偶然と運命――九鬼周造の倫理学』(ナカニシヤ出版、2015年)、『看護学生と考える教育学――「生きる意味」の援助のために』(ナカニシヤ出版、2016年)、共編著に『反「大学改革」論――若手からの問題提起』(ナカニシヤ出版、2017年)、共著に『道徳教育はいかにあるべきか――歴史・理論・実践』(ミネルヴァ書房、2021年)などがある。

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