2023年2月には、すでに2019年に授業料値上げに踏み切った東京藝術大学が、それでもまだ財政難にあえぎ、なんと学生の練習用ピアノ5台を24万円で売却したという、衝撃的な報が飛び交った。
調律費などの維持費を含めて高く見積もっても、せいぜい100万円程度であろう。明治以来、我が国の芸術をリードしてきた、あの東京藝術大学が、わずか100万円程度の経費削減のために、よりによってピアノを売却したのである。
続いて、同年10月には、金沢大学がキャンパスのトイレ改修費用を、クラウドファンディングで募集した。目標額は300万円。もはや国立大学には、トイレを直す300万円の金さえないのだ。SNSでは「どんだけお金ないのよ……」という驚きの声がもれていたようだが、無理もない。まさか、国立大学がここまで追い込まれているとは、ふつうの国民は想像だにしないだろう。しかし、これが現実なのである。
それでも大学は「ピーピー騒いでいるだけ」
ところが、である。
国立大学をここまで追い込んでおきながら、それでも政府は、「絶対に運営費交付金は増やさない」という姿勢を崩さない。
コロナ禍やインフレの前のことではあるが、近年の強権的な大学改革を推進してきた、通称「チーム甘利」のリーダーである自民党の甘利明氏は、2019年、あるインタビューに答えて、こう発言している。
まともに研究できないどころか、トイレを直す金さえないほど困窮しても、大学はただ「ピーピー騒いでいるだけ」なのである。
ピーピー泣いている暇があったら、1円でも多く自前で金を稼いでこい。学生からもっと授業料をふんだくればよいではないか。
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