教職調整額を10%に引き上げるための720億円というのは、2024年度に前年度より教育人件費が増える412億円よりももっと多い。しかも、賃上げの傾向は続いているし、2025年度には35人学級を小学6年生に実施しそこで教員をさらに増やす見込みである。
412億円相当の国庫負担をやめるなら財源の一部は捻出できるが、それはやめられないというなら、別のところから教職調整額増額の財源を出してこないといけない。昨年6月に閣議決定された「骨太方針2023」には、教師の処遇改善は「安定的な財源を確保しつつ」進めるとされている。
残業代増を押し切るのか?
この教職調整額を一律に増やす提案が、教育現場から大歓迎されているかというと、決してそうではない。すでに教育関係者からは、「給与を増やすより仕事を減らしてほしい」という主張が出ている。
確かに、「予算を獲得したから、給与を増やすので働いてくれ」という見方をされても仕方がない。
教職調整額を一律に増やすという発想がそうさせているのだろう。教員の中には、時間外勤務が多い人もいれば少ない人もいるし、主任は業務負担が大きいとか負担の軽重にも差がある。
加えて、一律となるとより多くの財源を必要とする。もちろん、予算増額を伴わない形で教員の処遇改善を進める方策はまだまだある。
中教審と教員の意見の相違が顕在化する中、教員の処遇改善をどうするか。
文科省は、教職調整額の一律増加を採用せずに「呉越同舟」を維持するのか、財源確保のために他の文教予算にしわ寄せをしてでも教職調整額を一律に増やす提案を押し切って「呉越同舟」を解消するのか。決断の時が迫る。
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