
今回、話を聞いたのは、40年以上にわたって公立高校の教員を務めた佐々木直樹さん(仮名)。定年退職後にフルタイムの再任用教員となったが、「扱われ方に納得がいかなかった」と振り返る。どこに納得がいかなかったのか。「再任用教員のリアル」に追った。
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年齢: 68歳
勤務先:公立高校(退職済み)
同じ仕事をしているのに「給与半減」のショック
今から8年前の4月。前年度に定年を迎えて「再任用教員」となった佐々木さんは、それまでの30数年間と変わらない日々を送っていた。担当教科の授業に、職員会議への参加を含むさまざまな校務、部活動の指導。平日は部活動終了後の授業準備で連日20時過ぎまで残業する。
長年続けてきた働き方に不満はない。ハードな毎日だが、体力の衰えも感じなかった。しかし、給与支給日に給与明細を見て、つい衝撃を受けたという。給与額は、前月からほぼ半減だった。
「もちろん、給与に関する説明は事前に受けていました。しかし、実際に金額を見るとやはりショックでしたね。なにしろ、仕事の内容は全く変わらないし、残業もバリバリやっているわけですから」
自治体によって金額は異なるが、東京都の場合、2023年4月時点で再任用教員の給与は教育職2級で25万8100円(級は1級が講師、2級が教諭、3級が主任、4級が主幹・指導教諭)。
ちなみに教育職の初任給は大学卒で21万400円。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、一般労働者の平均給与は31万1800円(年齢43.7歳、勤続年数12.3年)だ。これらを踏まえて、再任用教員の給与額を多く感じるか少なく感じるかは人それぞれだが、佐々木さんは当初、金額自体には納得していたという。
「生活に困るほどではありませんし、定年後の再雇用で給与が下がるのは理解できます。でも、同じ仕事なのに『本当に半減なのか』とは思いましたね」
「同一労働同一賃金の原則はどこにいってしまったのか」と地理歴史・公民の教員らしい疑問も口にした佐々木さん。雇用形態による待遇格差を解消しようという働き方改革に逆行している現実に、「給料半分なら働きも半分でいいんじゃないか」と口にする再任用教員もいるという。