最近、「勉強になるマンガ」が増えてきたと感じます。マンガといえば、ポップで勉強になる要素なんてなさそうに感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、実はそんなことはありません。
最近のマンガは、考えさせられるものや勉強の役に立つ部分があるものも増えています。東大生の間でも、マンガを読んで感想を言い合ったりすることは多いです。今回は、年末年始の休みを利用して読みたい「勉強に役立つ」マンガを3冊紹介したいと思います。
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現役東大生。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指し、オリジナルの勉強法を開発。崖っぷちの状況で開発した「思考法」「読書術」「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪の末、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社「カルペ・ディエム」を設立。全国5つの高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計38万部のベストセラーとなっている
(撮影:尾形文繁)
理系の知識や勉強に向かう姿勢が学べる1冊
1冊目は、『理系が恋に落ちたので証明してみた。』(フレックスコミックス COMICメテオ)です。タイトルのとおり、理系の大学生が恋という非科学的なものを証明しようと奔走するマンガです。まずはこちらを紹介させてください。
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このマンガは、さまざまなところで勉強になります。理系の考え方や問題が出てきて、それをどう証明するか、どのように考えれば解にたどり着くかなどが描かれているので、単純に知識として得るものが多いです。
しかし、何よりも勉強になるのは、勉強に向かう姿勢です。例えば、このマンガでは「この研究は何のために役立つのか」を教授から突っ込まれるシーンがあります。自分がいったい何を勉強していて、どんな物事に自分の勉強が役立つのかを考えていない生徒を教授が叱るのです。
ともすると、僕らもこの問題に陥ってしまいがちですよね。自分の勉強が何に役立っているのか見えずに勉強して、勉強のための勉強になってしまう。
でも勉強ってそういうものではないんですよね。例えば、このマンガにも登場しますが、理数系の勉強をしていると出てくる「巡回セールスマン問題」は、ディズニーランドでどういうコースで行けばいちばん多く乗り物に乗れるのかを考えるのに役に立ちます。ゲーム理論のナッシュ均衡を学べば、文化祭の出し物がかぶらないようにするのに役立ちます。
学問は、卑近な悩みを解消したり、世の中のちょっとした問題に対する解決の糸口をくれるものなのです。
このマンガはタイトルのとおり、「恋」と「理系的な学問」を結び付けるものです。このタイトルに突っ込みを入れる人もいるかもしれませんが、違うんです。学問とはそういうものであっていいんです。それくらい自由に学んだり、研究したりしてもいいものなのに、僕らが勝手にハードルを高く設定してしまっているんですよね。
学問のハードルを下げて、勉強に向かう姿勢を学ぶために、このマンガはぜひ読んでみてもらいたいです。
「努力できない」と嘆いている人にお薦めのマンガ
次に紹介するのは、『3月のライオン』(白泉社 ヤングアニマルコミックス)です。僕はこの作品はぜひ、努力できないと嘆いている人にこそ読んでほしいと考えています。僕自身も受験生時代に何度も読み直して、何度も勇気づけられました。
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このマンガは将棋の棋士の話なのですが、どの棋士も凡人よりも何倍も何倍も努力しています。努力して努力して努力して、それでも足りなかったり戦っても勝てなかったりを繰り返しながら、戦っています。
努力を続けるのって難しいですよね。頑張っても何も得られないかもしれないし、努力したって無駄になるかもしれない。自分にがっかりすることもあるかもしれないし、どうしようもないことがあって駄目になってしまうかもしれない。
このマンガでは、どうしようもない理不尽に対して懸命に戦って、必死に食らいつく人たちの姿があります。誰も彼もが将棋で報われるわけではありません。でも、何か努力を繰り返しているときに、得られるものが、見える世界がある。報われないかもしれないけれど、確かに救いはある。理不尽で、ほかの人から見たら愚かな努力に見えるかもしれないけど、意味はある。そういうことを教えてくれるのがこのマンガなのです。
頑張れない若者って増えていますよね。僕もそっち側だったので、すごくよくわかります。でもこのマンガを読むと、ちょっとだけ「努力するのも悪くない」「報われないかもしれないけれど、頑張ってみようかな」と思えるようになるのです。
戦国時代から江戸時代を描いた読み応えたっぷりの歴史マンガ
最後は、『へうげもの』(講談社 モーニングKC)です。
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このマンガは古田織部という戦国武将の目から見る戦国時代〜江戸時代の流れを追ったものです。織田信長、豊臣秀吉、千利休、徳川家康……いろんな人物が、コミカルかつ魅力満載に描かれています。これだけ面白いうえに、この時代に、なぜ「茶の湯」が流行したのか、「文化」というものはどのようにつくられていくのかということもわかります。こんな読み応えたっぷりな歴史マンガも珍しいでしょう。
ところで、こういうマンガを紹介すると、「史実に合っているのか」を気にされる方も結構いらっしゃるかと思います。先に言っておきますが、このマンガはギリギリ史実で描かれていないところを、めちゃくちゃな解釈をして描いています。千利休は大柄だったというのは史実どおりなのですが、並の武士が束になってもかなわないくらいムキムキでめちゃくちゃ強いという設定になっています。
それでいいのか!?と思うかもしれませんが、それでいいんだと思います。脚色されている部分もあるかもしれないし、「それはないよ」と思ってしまうかもしれませんが、でもそれを楽しめるようになると、歴史もきっと楽しめるようになります。
いかがでしたか? これらのマンガは僕にとって、自信を持ってお薦めできるものです。ぜひ皆さんも「マンガだから」と敬遠するのではなく、「マンガだからこそ」と思って読んでもらえれば幸いです。
(注記のない写真:Graphs / PIXTA)