
ボーク重子(以下、重子):今日、中尾校長先生にお会いして、すでに最高でした! 約束の時間よりも早く到着したというのに校長先生はすでに玄関で待っていてくださって、しかも私のこの格好(全身ピンク、シューズもピンク)を見ても驚くことなく、完全受容なんですもの。私の格好ってリトマス試験紙のようなものなんです。そこで引かれなかったことで、心理的安全性が担保されてるって感じたの。最高に自分らしい取材ができそうだ、と感じました。今日はよろしくお願いします。まずは先生のご経歴を教えていただけますか?

中尾校長(以下、中尾):大学を卒業してすぐ教員になり、20年ほど英語の教員としていくつかの高校で勤務した後、教育委員会に行きました。11年ほどいた中で、少子化や、今の学校のままでいいのかといった課題に直面し、「新しい教育をやっていかなきゃいけない」というチームが立ち上がり、そのメンバーになったのです。
重子:新たな教育とは、具体的にどんなことでしょうか?
中尾:まず、将来社会に出ていく子どもたちにとって「どんな力」を身に付ける必要があるのか? と考えるところから始まりました。私自身、テストで99点取れた子どもと、60点の子どもを比較したとき、どちらがよりすばらしいと点数では決められないと、本当に心の底からいつも思っているんですね。むしろ、これからAIなどのテクノロジーが台頭してくる時代では、試験の点数ではなく、最終的には自分の将来を「自分で」デザインする力のほうが大事だと思います。子どもたちが100人いたら100通りの未来があるのですから。
重子:そうですね。
中尾:そう考えると、今までしてきたような「東京大学に何人入りました、関関同立に何人合格です」といった進路実績や、学力だけに基づいた進路指導は意味をなさないと思っています。「自分が何をしたいのか」「どんな道に進みたいのか」を、高校の3年、中学校からであれば6年の間でしっかりと考えてもらう機会をつくることが必要。その中で新たな教育をする学校をつくろうということになり、当校のコンセプトづくりをして、校長になったという流れです。
奈良県・公立中初のIBプログラム候補校
重子:そうして生まれた奈良国際ですが、今年新規開校した中学校は、国際バカロレア(IB)中等教育プログラムの候補校※で、認定されれば奈良県の公立校では初のIB校ということですが、IBプログラムは、どこが魅力的なのでしょうか?

奈良県立国際中学校・高等学校 校長
中尾:日本だけじゃなく、国際的なプログラムの標準があるところが魅力だと思います。国際水準ですべてが定められており、世界中どこで学んでもこんな感じの子どもたちを育てるという学習規準があります。
重子:IBプログラムには「より良い、より平和な世界を築くための10の学習者像」がありますね。「探究する人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念を持つ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」そして「知識のある人」。これって10のうち9つが「非認知的な能力」なんですね。