重子:ほかには、「異学年交流」があったり、たくさんの留学生が在籍したりしているんですよね。
中尾:そうですね。留学生は、4年間で15人くらい来ています。日本語をしゃべれない状況で来ても、急にすごくしゃべれるようになったりするんですよ。本当にすごいです。そういう子たちが、つねに身近にいる環境をつくっていくことで、違いって面白いなとか、すごいことだなと感じてくれたらと思っています。

高橋真由(編集:以下、高橋):その多様性を学べる環境はいいですね。インターナショナルスクールなどであっても、国内にある学校で国際的な空気感をつくるのは難しいと聞いたりもします。自然にそれができるのはいいですね。
中尾:はい、ありがたいですね。文化や考えの違いを楽しみ、自分や周りの人を大切にしながらつながることは重要だと思います。
重子:違いを楽しむ。多様性って「大変」って思われがちだけど、本当は学びが多くてワクワクすることですよね。
中尾:はい、これは余談ですが、中学校のミッションを考えている時に、文言が「違いを『楽しむ』でいいの?」と聞かれたのです。でも、楽しむくらいの気持ちがないといけないと思っていて、自分のこだわりで残しました。
重子:ここでも、いちばん大事なのは校長先生のぶれない軸なんですね。
偏差値ではなく「あいうえお」順で示す進路実績
重子:高校の開校から3年経ったということで、初の卒業生が出たと思いますが、どうでしたか?
中尾:ホームページに進路実績を載せているのですが、実にさまざまな進路に進んでいます。

学校ホームページにある進路実績より
重子:え!? すごくない? これ? 合格した大学が「あいうえお順」です!
中尾:はい。それはもうすごいこだわりがあるんです。普通は、あからさまに「偏差値順」で載せる学校が多いですよね。でも当校では偏差値順ではなく、「この子たちは、どこに行きましたよ」というのだけを見せたかったのです。国内の大学はもちろん、海外大学にも7名が合格しました。大学以外には、女優になりたいという思いから、文学座に行った子もいます。ボートレーサーになると、その道に行った子もいますし。それぞれが、本当に望む価値基準でキャリアデザインしてくれたらいいなと思っています。これは学校のというか自分のこだわりですね。
重子:ここにも中尾先生のぶれない軸があるんですね! すばらしい!
「教師、生徒、保護者、地域」4者のチームワーク
重子:ところで校長室にあるこの机は保護者の皆さんからの寄贈だとか?
中尾:うちは親御さんも本当に協力的なんです。今まで日本の学校って保護者はどちらかというと、外の人というかお客様みたいな感じだったんですけど、うちは学校コミュニティーの1つとして保護者をすごく大事にしています。1期生の保護者の方たちとは、毎日ここで「どんな学校になるやろ?」という話もしてきましたし、保護者も一緒に学校づくりに参加してもらいました。教師、生徒、保護者、地域の皆さん、みんなでよい学校にしていくという、4者という感じですね。そして目指すところをはっきりさせるのが大事です。「ビジョン」の共有ですね。
高橋:保護者が学校に入り、シームレスにつながりみんなでよくしていくというところには、本当にヒントがありますね。例えば私も、子どもが保育園から小学校に上がったとき、急に保護者が蚊帳の外になったように感じたことがありました。また、受験戦争が過熱し、偏差値で子どもたちを判断してしまうと、見守る大人たちが思考停止になる危険性もあります。理想の教育環境のイメージを共有し、保護者、学校、先生、地域の皆さんが一体となって、子どもたちを育むというのはとても大切ですね。