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〈1台5万円〉石油ヒーター会社「ダイニチ工業」が高級コーヒーメーカーに参入するワケ/家庭向けコーヒーメーカー市場で起きている変化とは?

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ダイニチ工業が発売する、5万円のコーヒーメーカー(撮影:編集部)

9月下旬、東京ビッグサイト。東京・有明にある巨大展示場には、英語や中国語、スペイン語などの外国語も飛び交う黒山の人だかりができていた。

お目当てはアジア最大規模の国際コーヒー見本市・「SCAJ(Specialty Coffee Association of Japan)ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション2025」。30を超える国と地域から、スペシャルティコーヒーに関わる450の企業・団体が集結した。

出展する企業の中には、一般的にコーヒーのイメージがない企業もある。新潟に本社を構える、石油ファンヒーター大手ダイニチ工業がその1社だ。1957年に前身が創立され、加湿器では国内シェア首位級を誇る。

なぜ一般向けコーヒーメーカーに参入?

ダイニチ工業がコーヒー事業に参入したのは、97年に遡る。

ただ、これまで手がけてきた製品は、生のコーヒー豆を焙煎して挽き、ドリップするコーヒーメーカーや、業務用のコーヒー豆焙煎機など、業者やコアなコーヒーファン向け。一般消費者はなかなか購入しない製品にとどまっていた。

このたび発表したのは、コーヒー粉を入れてドリップする一般向けコーヒーメーカー。12月に発売予定で、顧客の裾野を広げる狙いがある。

なぜダイニチ工業は今、コーヒーメーカーに再び注力するのか。

かつて同社では、売り上げの圧倒的割合を石油ファンヒーターが占めていた。

しかし、マンションなど集合住宅で石油ファンヒーターの使用を禁止されたり、エアコンに代替されるケースが増えたりしていることを背景に、市場全体がゆっくりと縮小傾向にある。その結果、石油ファンヒーターなどの暖房機器事業は2024年度売上高が136億円と、10年前と比べ7%の減収になった。

新たな柱の育成が必須の中、コーヒー事業に限らず新製品開発を広く進めてきた同社。

多角化を図る中で03年に参入した加湿器を含む環境機器事業は、24年度に売上高50億円まで成長した。しかし、97年に参入したコーヒー事業は、柱に育つことはないままだった。

そこで20年ごろ、コーヒー事業にもう一度注力することを決定した。 背景には、祖業で培った製品開発への自信があった。

吉井唯社長は「主力製品である石油ファンヒーターでは、排気のトラブルや火事などの危険があってはならないため、製品を徹底的に作り込む文化がある」とし、コーヒーメーカーでも、こうした企業文化のもとで製品開発をすれば、先行する他社製品に差をつける余地があるとにらんだ。暖房機器で培ってきた、気流や熱を制御する技術なども生きた。

そして今年8月、コーヒーメーカーと新型の焙煎機を発表するに至った。

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