いろいろと考えるよりも、無心で動くほうが先延ばしは減ります。
【盲点②】「心の勢い」を落としている
江戸時代の禅僧、沢庵(たくあん)禅師は、徳川将軍家の指南役であった剣豪の柳生宗矩(むねのり)に対し、そんな不動智が禅の修行によって得られる、と説きました。
これを私なりに解釈すると、こうなります。
人間が知識を得て賢くなると、あれこれと頭で思い悩むことが増え、モメンタムが落ち、動けない人になりがちです。
これが、「智恵に囚われている」 状態です。
たとえ賢い人であっても、状況に応じて機敏に対応するには、瞬間的に「莫迦になる」必要があります。
莫迦になると、感覚が鋭くなり、モメンタムも高まりやすくなります。
いったんは知識を得た人がモメンタムを高め、「莫迦になって、今すぐやる」人になるための修行が、行入なのです。
私自身、修行中は散々「バカになれ!」と先輩方から指導を受けました。
知識や教養を身につけるのは当然ながら大切なことです。
しかし同時に 「考えすぎて動けなくなってはいけない」という戒めが、禅にはあるのです。
そのため、禅では「無心になって、何かをする」修行を繰り返します。
その効果は、神経科学の視点からも説明することができます。
すなわち、禅の修行の効果とは、人の「注意容量」を奪うことです。
ある瞬間に人間が何かに向けることのできる注意の量(注意容量)には限りがあります。
時に心身ともに追い込まれるような修行によって注意容量を消費すれば、他のことに気をとられる心配がなくなります。