その他、掃除、調理、食事、洗面、入浴など、すべて細かく作法が定められているだけでなく、できる限り素早い身のこなしで行うのが基本。
禅宗においては、日常生活そのものが修行なのです。
その行入が時としてとてもハードなのが、禅修行の実際なのです。
不動智とは、即座に動ける状態
私の体験から一例を挙げましょう。一番印象に残っているのは、12月1日から8日の明け方まで、一度も横になって眠らないという修行です。
その間、食事やお経の時間以外はずっと坐禅を続けるのです。
途中でうたた寝をしようものなら、肩を警策(けいさく)で強く叩かれます。
何のために、こんな無茶をするのか。誰もがそう思うことでしょう。
そのルーツをたどれば、開祖であるブッダが、「まる7日間、菩提樹の木の下で座って悟りを開いた」という言い伝えに由来しているのですが、気になるのは、修行上の効果です。
一言でいえば、「莫迦になる」 ためです。
仏教用語で、莫迦は「無智」の意味です。
不動智(ふどうち) 、という禅の言葉があります。
智恵にあふれていながらも、それに囚われず、四方八方、自由自在に動き回れる状態。
現代風に訳すなら、ぐるぐる頭のなかで思い悩むことなく、臨機応変に考え、なおかつ「即座に動ける」状態。