しかし、私にはかねて問題意識がありました。
従来のマインドフルネスは、リラックス効果を通じて心のマイナスをニュートラルに戻すことは得意としていますが、人を力強く行動に駆り立て、心をニュートラルからプラスへ持っていくには、さらなるアプローチが必要なのではないかと。
「なんだかパッとしない人」をつくる社会
マインドフルネスはあくまでも心の中の自浄力を活用した取り組みであり、上向きに引っ張り上げるよりは、「心を整える」ことに主眼を置いた手法だからです。
マインドフルネスによって心を癒やすことは、もちろん大切です。
しかし、そこから瞬間的に心を鼓舞し、具体的な行動を起こしていくには、別の力がいるのではないか。
すべての人がその人生をより前進させるには、マインドフルネスの「その先」が必要なのではないか。
いつからか、私はそう考えるようになりました。
それに多くの人は、はっきりそうとわかるほど心がマイナスに振れているわけではありません。
私が勤めるメンタルクリニックを訪れる患者さんたちの心は確かに、一時的には心理状態が大きく乱れていることが少なくありません。
でも、それより何倍も多くの人が、マイナスとは断言できない、けれども「なんだかパッとしない」という状態にあるのが、現代という時代の特徴です。
マインドフルネスの「その先」とは何か。
暗中模索を続けるなかで、私はビジネスの世界に「モメンタム」という考え方があるのを知りました。
モメンタムの不足こそ、「なんだかパッとしない」心の状態の原因であり、「動けない」人たちの一番の共通点。