日本経済のGDP(国内総生産)が50年ぶりに順位を落とし、ドイツに次いで4位へランクを下げるという。これはあくまでドルベースで比較した数字である。
著しい円安によって、日本経済の衰退は、世界ではその実態より低く見られている。円ベースで考えると実は上昇していて、600兆円近くになっている。日本の円換算で見ると、経済はわずかだが成長しているともいえる。
もっともGDPという指標は、受験生の偏差値が本当の学力を意味しないように(少なくとも試験の内容が違う外国では通用しない、日本だけの学力ともいえる)、国の本当の経済力を意味しているわけではない。
国力はかさ上げできる
アメリカのように基軸通貨ドルを発行し続ける国は、いくらでもGDPをかさ上げすることができるし、ドル高調整を行うことも可能だ。国際的ランキング比較の好きな日本人にとって、毎年公表されるGDPランキングは、大学入試の偏差値のように一喜一憂する格好の材料ではある。
しかし、GDPだけ見てその経済力を比較すると思わぬ落とし穴に落ちることになる。あくまでも、これはある側面だけを切り取っている経済力にすぎず、本当の実力とはいえないからだ。
日本の偏差値が、国際社会で通用しないように、国際社会での経済力は、ランキングの上下で決まるようなものではない。国家の経済力は、きわめて多様な要素が重なりあった、いわば単純な強さのランキングではないのだ。
40年以上前、私は東欧のある社会主義国に留学していた。ドルベースの為替レートで計算すると、その国の1人当たりの所得は、日本人の所得の5分の1以下にすぎなかった。
しかし、生活水準のレベルで考えると、日本に比べてそれほど劣っているわけではなかった。この国の中だけで暮らせば、結構水準の高い生活を維持できていた。もちろん海外に出たり、海外から輸入品を購入すると、その支出は高額なものとなり、生活レベルは急激に落ちていく。
国内製の製品でまかなえば、自動車も電機製品もその質はともかく、一応そろっていた。もちろん、ガソリンやコーヒーなどの海外でしか生産できないものは代替不能で、そのぶん当時ドル高による原料価格の高騰に悩まされていた。
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