この当時のソ連東欧のコメコン(経済相互援助会議)がアジアやアフリカまで拡大し、ドルではなく、すべてルーブルで購入できるほど範囲が拡がっていれば、石油もコーヒーも安価で買えたのだろう。
だが、ドルが国際通貨であったため、アメリカと西欧は、ソ連と東欧にドル不足という厳しい経済的締め付けを行ったのだ。それがアメリカのレーガン政権による利子率上昇であった。
利率が高いことでアメリカのドルが強くなり、借りていた借金の利子が増え、何も輸入できないという現象が起こったのだ。これは一種のアメリカによる経済制裁であった。
1990年代、世界がルーブル決済できていたら?
これによってソ連・東欧経済は崩壊するのだが、もしソ連・東欧が中国・インド・ブラジル・トルコなどと、当時ルーブル決済できていたらどうなっていたのであろうか。
もしルーブル決済で当時のGDPを測れば、日本との5倍のGDPの1人当たりの格差も実際は2倍弱となり、ソ連・東欧諸国はGDPランキングが劣位の後進的地域ではなかったということになる。
まさにこの問題こそ、アメリカと西欧によるロシアや中国への経済制裁が現在まったく機能していない原因であるし、ロシア経済は弱体で、ロシア軍も弱体で、すぐにウクライナが勝利を収めるであろうという西側の楽観的な臆測が幻に終わった原因であったといえる。
西欧の楽観的観測だが、ウクライナに膨大な西欧の資金援助がそそがれ、ロシアへの経済制裁が強化されれば簡単にロシアは崩壊しウクライナはすぐにでも勝利するであろうと、欧米は当初踏んでいた節がある。
ある意味これは、単に机上の空論(ナラティブ)にすぎないのだが、大方この線に沿って、西側の政府もメディアもロシアの経済力やロシア軍の兵力を試算し、安易な勝利図を描いていた。
もっとも、アメリカでも元大量破壊兵器監察官スコット・リッター(1961~)のように、ソ連に滞在し1980年代のソ連の工業力や兵器生産の現状を知悉していた元軍人は、このような楽観的な計算に警告を発していた。
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