ロシア経済は、ドルで計算したGDPなどで理解できる世界ではない。かつて冷戦時代西側の経済学者はソ連のルーブルの価値、ソ連の生産力をあれやこれやと論議し、ソ連の実際のGDPは粉飾されたものであり、実際は相当低いものであり、恐れるに足らぬものだと予測したことがあった。
なるほど、ソ連・東欧は簡単に西側の圧力によって、社会主義体制を崩壊させてしまった(自壊といったほうがいいのだが)。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」という傲慢が、その後西側世界にはびこるのは当然だったのかもしれない。
しかし、ここで実際の生産力そして国力というものを本当に、ドルの為替ベースで見たGDPなどで知ることができるのであろうかということを、考えてみるべきである。
ロシアをめぐる世界経済の輪
これでみると、今でもロシア経済のGDPは2兆ドルしかなく、アメリカの10分の1以下、人口の少ないカナダやイタリアのレベルにしかすぎない。しかし、これはあくまでもドルベースでの計算であり、本当の実力を示すものではない。
実際は日本やドイツ並か、ものによってはそれ以上の力があると思ったほうがいい。ロケットや航空技術など西側の模倣技術ではない最先端の技術が多くあるのだ。
地政学の専門家だけでなく、ソ連経済や東欧の経済を学び、ウクライナを含む東欧地域に暮らしたものならば、そこにはロシア(旧ソ連)の制度、もっと昔に遡ればオスマントルコの制度が残存し、ソ連崩壊以後の30年という月日だけで簡単に西欧型のシステムに変わりえるものではないことは、理解できるはずである。
もちろんそれと同じく、歴史的にこれらの地域はある意味一蓮托生であり、黒海にそそぐドナウとドニエプルの両大河でしっかりと結びあっているということである。そしてそれは、宗教的にも正教会のみならず、中東のイスラム教やユダヤ教徒の結びつきも強い世界である。
東欧諸国の多くは、西欧だけでなく長い間ロシアや中東と結びついて発展してきた。かつて東欧製の製品はロシアや中東で気に入られ、よく売れていたのだ。確実にそこに市場をもっていた。
それはEUに入った今でも変わらない。歴史を簡単に変えることはできない。彼らの経済がかつて比較的安定していたのは、この枠の中で動いていたからである。そこから出ることは、不安定と危機をもたらしたのである。
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