働く人が身につけたい「自己ブランディング」方法 ブランディングデザイナー西澤明洋さん直伝
ブランドリサーチの基本は「いいところ探し」と「違うところ探し」。違うところ探しは、市場や競合を丁寧に見ていく必要がある。
「競合が多いところで一点突破できる逸材もいますが、確率はあまり高くない。そこで必要なのが競合との『違うところ探し』なのです。
『自分には突出した個性なんてない』と思う人もいるかもしれませんが、他者と違う点を作るのは、実はそれほど難しくありません。有効なのは、あるモノにまったく別のモノを掛け合わせる方法。これは『アイデアのつくり方』( ジェームス・W・ヤング CCCメディアハウス )という古典的名著で提唱されている方法です」
西澤さん自身も「デザイン×経営」を掛け算する個性がある。経営に踏み込んだコンサルティングができるデザイナーというポジションで、唯一無二の地位を築いているのだ。
そのほかにも例えば、スポーツトレーナー兼料理人や、心理学の学位を持っている営業パーソン、保育士の資格を持っている現代アーティストなど、意外だが相乗効果をあげそうな掛け合わせはたくさんありそうだ。
独自性が際立ち、他者が踏み込んでいない点を探す
ブランドリサーチを基に「いいところ」と「違うところ」が重なる部分で、独自性が際立ち、まだ他者が踏み込んでいないポイントを探そう。そこにブランドのポジションを置くプランを立てると、ブランドの独創性が増す。
「これは過去の私自身の例ですが、私が大学で建築を学んでいたときは『建築家として事務所を構え、安藤忠雄さんのような建築家になりたい』という希望を抱いていました。
安藤忠雄さんは時代の寵児で、当時、建築学科の学生の多くは、彼のようになりたいと思っていたものです。私も同様に、ロールモデルとして憧れていたわけです。しかしだからこそ私は、進路選択のときには、安易にその道は目指さず、本当に自分のやりたいことは何かを、自問自答しつづけました。
すでに周囲に認知されている成功例は、そこに続こうと希望する人も多いので、レッドオーシャンに打って出ることになってしまいますよね。ブランドとして唯一無二の存在になるためには、同時代の成功モデルのバイアスを外して、独自のポジションを見つけることがカギです。
私自身は建築ではなく、大学時代にのめり込んだ『デザインマネジメント』の分野で独立を目指すことにしました。私が学生だった1990年代当時、デザインを経営に活用するという研究は始まったばかりでした。そして偶然にも母校の京都工芸繊維大学は、デザインマネジメントを学ぶための学科ができた、日本で最初の大学だったのです。
まだ認知も十分でない分野に進むことは、リスクもありましたが、それ故にこの分野のパイオニアとなれたのだと思っています」
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