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スカイツリーの下、深夜0時に開く謎の食堂の正体 気がつけば営業64年、82歳店主の自由すぎる運営

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  • 丹治 俊樹 日本再発掘ブロガー・ライター
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通いなれた常連客は、店に食材を持ち込ませてもらい、鍋をすることもあるそうだ。

「こっちは横着して作らないし、手を使わないから無料サービス。場所提供だけ。酒持ち込みのお金はもらってね」

手が空くとナンプレに勤しむ。「みんな今スマホで見ちゃうけど持ったことないんで。こういうのやってるとボケないんだよね」(写真:著者撮影)

“さんさん”で帰路につく常連客

14時に店の営業が終わると、竹之内さんは買い出しをして眠りにつく。営業時間を変えて以来、ずっと昼夜逆転の生活をしているという。

「年をとるとさ、そんなに睡眠時間をとらなくても大丈夫なんだよね。寝ててもしょうがないから、目が覚めたらね、お店を開けちゃうの」

深夜1時から取材をはじめて、カレーを食べ、竹之内さんや常連客と話しこみ、店の来歴に思いを馳せていたら、気が付けば夜が明けていた。近くのとうきょうスカイツリー駅では、5時になると始発電車が動き出す。またいつもの毎日が始まる。

「あっ、時間になっちゃったよ。“さんさん”で帰る。じゃあね」と常連客の1人がつぶやく。

“さんさん”とは、会話の内容から察するに5時33分のこと。とうきょうスカイツリー駅から乗る電車の発車時刻を指していた。常連客が帰宅し、一日が始まった外の世界とは逆に静まり返る店内。こうした光景がキクヤ食堂の日常であり、そしてこれからも続いていくのだろう。

取材中に、竹之内さんがふと「今年はさ、昭和で数えたら98年になるんだね」とこぼした言葉がいつまでも私の印象に残っている。

参考文献:『物価の世相100年』(岩崎爾郎著/読売新聞社/1982)

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