私が食品加工の現役だった時代の話です。
プロの板前さんは「だし」をとって、最後に味を決めるときに、「ひと塩」といって塩を少量入れて決めるのですが、まれにそれがどうしても決まらず、「今いち、味がボケている」「一味、足りない」というときもあるわけです。
「お助け」に頼るのを、かなり恥ずかしがっていた
でも、そこで塩を入れすぎると今度は塩辛くなってしまう。まさに「ひと塩」なのです(ひと塩については『平気で「安い醤油」買う人の超残念な盲点【後編】』でも述べているので参照してください)。
そんなときに、板前さんが頼っていたのが、「塩」が9割で「グルタミン酸ナトリウム」が1割で構成されている味の素の「アジシオ」でした。
これを入れると「今日はイマイチだな」「どうしても味が決まらない」というときも、ピタッと味が決まる。だからみんな「アジシオ」のことを「お助け」と呼んでいました。
でも、プロの板前さんたちは「お助け」に頼ることをかなり恥ずかしがっていました。
できれば「お助け」に頼らず、塩だけで決めたいというのが、「プロとしての当然の矜持」だったのでしょう。
そういう現場を見て来た私にとって、プロが堂々と「白だし」を使うなど、ちょっと信じられない思いです。
でも、今は「プロの世界」も変わってしまったのかもしれません。
高級寿司店の棚に味の素の「ほんだし」が置かれているところもあるというのですから、なんとも寂しい話です。
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