「奨学金850万円」女性に両親がかけた謝罪の言葉 「言うことを聞かない娘」に親は厳しく…

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「1日1食だったので、毎日お腹が空いていて、本当にガリガリでした。お肉屋さんの前に立ったときに、コロッケを揚げるいい匂いがして、その場で動けなくなってしまったこともあります。

そこで、土日は賄いが出るファミリーレストランで8時間働いて、平日は家庭教師のアルバイトで、なんとか毎月10万円稼いで食いつなぎました。夏休みなどの長期休暇期間はもっと稼ぐことができましたね。学費で使う奨学金も単純計算で4年間で合計240万円ですが、卒業するときに使わなかった分を返済できるように、できる限り切り詰めてお金を貯めていました」

過剰なまでの節制生活を送っていたことで、心身は次第に変調をきたしていった。

「結局、人間というのはしっかりと食事を摂らないとダメなんですよね。体調不良が重なり、バイトに行けず、講義にも出られなくなるようになります。そして、そういうときに限って、甘い言葉をささやいてくる男にだまされてしまうんです……。

結果、メンタルが崩壊してしまったため、1年間休学することにしました。でも、大学にカウンセリングのサポートがあったため、そこを利用したり、薬を服用したりすることで生活を立て直して、大学生活に戻ることができました」

1年間休学してお金を貯めた

こうして、生活を改めるために、家賃3万円のアパートも2年で引き払い、今度は家賃5万円の風呂付きアパートという「天国」のような場所に引っ越す。そして、4年生に進級する前に、畠中さんは再び休学する。

「わたしは卒論執筆をとても楽しみにしていたんです。題材も決まっていたのですが、今までと同じようなバイト中心の生活では、卒論のためにエネルギーを割くことができません。そこで、1年間休学して、毎日フルで入って月20万円稼げる仕事をしてお金を貯めたんです」

2度の休学で、大学を卒業するのに6年間かかってしまったが、もともと勉強が好きだった畠中さんは、そのまま大学院に進むことにした。

「学部時代は文学部で哲学を専攻していましたが、教職課程もとっていたので、4年生のときに教育実習で母校に行ったんです。そこで『人と人が学ぶ現場』にいることが、非常に居心地が良かったんですね。せっかくならもう少し教育について学びたいと思って、大学院の教育学科に進みました」

高校生の時に思い描いていたビジョンが、ここに来てつながるわけだが、勉強するにも金はかかる。そこで、畠中さんは奨学金を120万円追加。さらに、修論執筆が消化不良に終わったことで、博士課程に進み、さらに450万円の奨学金を借りた。

「もっと、学ぶことで、さらなる知見を得られると思ったのと、当時はどの自治体もとにかく採用枠がなく、教員志望の学生にとっても就職氷河期だったんです。そこで、教員採用試験のためにエネルギーを使うよりは、借金を背負ってでも、勉強したほうがいいと思ったんですね」

次ページ成績優秀だったため、120万円の奨学金は返済免除に
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