「奨学金520万円」東大卒26歳が怒った友人の一言 「奨学金があるからいいよね」とお小遣い扱い

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沢村真珠さん(26歳・仮名)は奨学金520万円を借りて東京大学に進学した女性。奨学金に対し、周囲との考え方の差を感じることもあったようです(写真と本文は直接関係ありません)(写真:mits/PIXTA)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「奨学金は高校生のときから借りていました。ただ、母が『お金が足りないから借りるね』というノリで借りたので、特に一大決心をしたわけではありませんでした」

今回話を聞いたのは沢村真珠さん(26歳・仮名)。九州出身で、現在は都内の専門商社で働いている。淡々と話す彼女だが、幼少期に父親が蒸発していたりと、かなりハードな体験をしている。

「母子家庭のうちに経済的な余裕はありませんでした。それでも、わたしと弟の2人を女手ひとつで育ててくれた母は、子どもたちに大変そうな素振りは見せないようにしてくれたんです」

県の育英会から毎月3万5000円の奨学金を借りた

沢村さんの母親は、教育学部出身で教員免許を持っていた。そのため、臨時採用の教師として働くこともあったが、沢村さんが中学校に上がるタイミングで学習塾を開いた。

「ただ、開業したばかりで収入も安定しない中で、わたしの高校入学の時期がやってきたんです。そこで『経営が落ち着いたらお母さんが返済するからね』と言われて、県の育英会から毎月3万5000円の奨学金を借りました。当時はまだ、民主党政権下で公立高校は授業料が無償化されていた時代だったので、3万5000円もあれば学校に通うことができたんです」

こうして、地元の進学校に通っていた沢村さん。子どもの頃から勉強はできたため、高校に入学する前から尊敬する母親に倣って、卒業後は大学進学を見据えていた。

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