「キャンパスに行くこともできなければ、アルバイトで生活費を賄うこともできない……。とりあえず、国からの給付金をもらうのはいいけど、家から一歩も出られませんでした」
学生の沢村さんだけではなく、実家の母親の学習塾も開店休業状態だ。そのため、政府の持続化給付金の申請をした。が、これが落とし穴だった。
「持続化給付金って、課税対象なんですよね。だから、うちの実家の学習塾はフランチャイズなので、例年より売り上げが減った場合は本部から補填してもらえるのですが、それに加えて持続化給付金を受給したところ、『前年度よりも収入が増えた』ということで保険料などが爆上がりしてしまったんです。
そうやって実家の年収が増えた結果、大学側が規定する『世帯収入〇〇万円』とか『何人きょうだいである』という基準にそぐわなくなり、大学院1年目の後期から、授業料が免除されなくなってしまって。支払う保険料が増えたので、実家の手残りは大して増えてなかったんですけどね……」
いくら国立大学とはいえ、半期で27万円は学費でかかる……。そこで、沢村さんは万が一のときにと貯めておいた第二種奨学金を、学費の支払いのために解禁。利子が付いてしまうため、苦肉の策ではあったが、実家の母親も助成金がなければ生活することもできなかった。
本当に余裕がある人以外、みんな奨学金を借りるものだと思っていた
災難に見舞われたが、沢村さんは無事に2年で大学院の修士課程を終えて、その後は就職した。
「この国で博士号を取得したとしても、安定した給料がもらえるような仕事に就けるのは早くても30代です。相当気が遠くなりますよね。これ以上はもう実家を頼りたくないし、自分もそろそろ稼がないと精神的に不安定になりそうだったので、早く高給取りになりたいと思ったんです」
こうして、沢村さんは前出の専門商社に就職。最終的には大学時代に190万円、大学院で330万円、総額520万円の奨学金を借りた計算だ(財団からの給付型奨学金は含めない)。
現在、社会人2年目。貯金はできないが、生活できるだけの給料はもらえているため、毎月1万5000円の返済にもそこまで苦労していないという。
「とりあえず、第二種奨学金で借りたうちの、学費で使わずに貯めておいた分は、一括で完済しました。今後、月々の余裕がもっとできるようになったら、ボーナス一括払いもしたいですが、まだ今は難しいですね」
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