これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。
浪人生活の一方で、奨学金の返済経験も
「僕の通っていた高校のカリキュラムには古文や漢文がなかったり、英語のテストも単語とその意味を書けていれば点数がもらえたので、世界史も日本史も教科書の冒頭20ページをやったらもうおしまい。
だから、僕も先生も『うちの生徒が一般入試で大学に入れる』とは誰も思っていませんでした」
今回、話を聞いたのは当サイト・東洋経済オンラインにて「浪人したら人生「劇的に」変わった」を連載中の教育系ライター・濱井正吾さん(33歳)。
彼は「9浪」を自身の肩書にしているため、いつものように仮名にしたところで、そんな経歴の人物はなかなかいないので、今回ばかりは本名である。
彼がこの連載に登場するということは、大学時代だけではなく、浪人生活を続けるために奨学金を借りてきたということだ。
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